LCD関連企業,東アジアで知財と情報セキュリティに課題
[2006/01/18]
日本の電子産業企業が東アジア地域(中国,台湾,韓国)へ進出する際,経営上の課題として知的財産やセキュリティに関わるリスクが顕在化してきた。この背景には,日本企業の東アジア進出が避けて通れない状況になっている一方で,東アジアにおける知財・セキュリティ体制が不十分なことがある。今回の連載では,このような状況について,薄型テレビに使われる液晶ディスプレイ(LCD)業界を例に,東アジアに進出しようとしている日本企業が採るべき知財・セキュリティ戦略のあり方を議論していく。 急激な低コスト化と部材の安定確保を前提とした成長シナリオ 薄型テレビ市場に関しては,多くの調査機関やLCDパネル・メーカーが,今後も引き続き急速な需要拡大を想定している。例えば,テクノアソシエーツが発行するレポート「LCDパネル・メーカーの事業戦略研究2006」によると,2008年に7000万台,2010年に1億台といった具合である。 ただし,これらの需要予測は,2010年に32型液晶テレビの市場価格が7万円〜8万円になることを前提にしている。さらに,このような市場拡大に見合った部材の中長期的な安定確保も前提条件の中に入っている。逆に言えば,このような前提条件が満たされなければ,上記のような市場拡大シナリオは成立しないということになる。 LCDパネル市場に関しては,市場シェアにおける韓国・台湾メーカーの台頭が著しいことは従来から知られていたことであるが,2004年の大型LCDパネルのメーカー別・国別のシェア動向を見ると,韓国・台湾勢による市場寡占化が一層進んでいることが分かる。韓国・台湾・日本のLCDパネル・メーカーは異なる事業ミッションの下でLCDパネル製造・販売の戦略を採っている。この結果,韓国・台湾の台頭により,戦略の違いが装置・部材メーカーに与える影響がより顕著になってきた。 LCDパネル・メーカーが抱えている事業課題 市場拡大シナリオの前提となっている急激な低コスト化と部材の安定確保を実現することは,LCDパネル・メーカーにとって急務な事業課題となっている。これに対し,製造原価に占める部材比率が上昇し,今後もさらに増加していく傾向が見えている。この結果,韓国・台湾のパネル・メーカーは,日本の部材メーカーが市場優位を確保している現状に,事業課題として強い危機感を感じるようになってきた。 製造原価に占める部材比率が上昇している原因は,ガラス基板の大型化によるコスト削減効果が減少していることである。従来,LCDパネル・メーカーは,ガラス基板の大型化という技術革新によってパネル製造コストを削減してきたが,そのコスト削減効果が期待を下回る可能性が見えてきた。この結果,2005年時点でLCDパネル製造原価に占める部材比率が60超だったが,2006年にはその比率が70%を超える比率となる可能性が高いことを示唆されている。 このようなガラス基板の大型化によるコスト削減効果の減少は,LCDパネル・メーカーにとって,自助努力でのパネル・コスト削減余地が小さくなり,部材メーカーという外部にコスト削減の成否を握られる傾向が強まっていることを意味する。また,部材コスト比率のさらなる上昇傾向は,このようなLCDパネル・メーカーにとって好ましくない傾向が一層強まっていくことを意味する。これに加え,韓国・台湾LCDパネル・メーカーにとって,日本という地域的に異なったメーカーに部材を依存することは,部材の安定確保の観点からも事業戦略上のリスクになっている。これらのことから,韓国・台湾のパネル・メーカーは,日本の部材メーカーが市場優位を確保している現状に,強い危機感を感じるようになってきた。 |
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