[2006/01/12]
LCDテレビの低価格化が進み,これに伴って世界市場が本格的に立ち上がってきた。LCDパネル・メーカー各社や各調査機関は,2006年におけるLCDテレビの出荷台数が2000万台を大きく超え,3000万台に迫ると予測している。継続的な低価格化によって,その後もCRTからの代替は世界規模で進むことは確実であり,「2010年には年間1億台の市場を切り開くことができる」(韓国Samsung Electronics Co., Ltd.のLCD部門)という強気の目標を掲げるメーカーも出てきた。こうした見通しを背景に,2005年の米国市場などにおける一時的な需要の停滞によって凍結していた台湾の次世代工場の建設も次々と再開され,当初計画よりも大きな投資に修正したメーカーが出てきた。 現在,テレビ向けLCDパネルの供給は,シャープ,韓国Samsung Electronics Co., Ltd.,韓国LG.Philips LCD Co., Ltd.,台湾Au Optronics Corp.,台湾Chi Mei Optolectronics Corp.の5社による寡占状態にある。テクノアソシエーツは調査研究レポート「LCDパネル・メーカーの事業戦略研究 2006」で,これら5社のテレビ向けLCDの事業戦略を「ミッション」,「市場環境」,「技術戦略」,「製造戦略」,「製品戦略」,「販売戦略」,「事業体制」,「財務戦略」の8項目の要素に分解し,それぞれを分析した。その結果,テレビ向けLCDを製造する点では同じであるが,各社での事業の狙いや事業モデル,市場環境に対する認識,財務的な背景など,事業戦略立案の前提条件の違いが,戦略面での多様な違いとなって現れていることが明らかになった。 これまでLCDテレビは日本のテレビ・メーカー,パネル・メーカー,製造装置メーカー,部材メーカーの4者が日本国内で技術を開発し,市場を立ち上げるフロンティアの役割を果たしてきた。こうした日本国内で閉じたサプライ・チェーンが,LCDテレビ産業を立ち上げるための「ゆりかご」になっていたといえる。その後,韓国や台湾のLCDパネル・メーカーが低価格化をけん引し,市場が世界規模に拡大してきた。今後は,世界中の消費者の多くが購入できる「1000米ドル」を下回るような低価格のLCDテレビを,世界中に分散した市場近隣の生産拠点で生産できる体制が求められる。こうした体制を構築するための技術と事業の両面での開拓者は,もはや日本のパネル・メーカーだけではない。方向性の異なる開拓者が独自の戦略を掲げながら,同じ市場で競うことになりそうだ。テクノアソシエーツでは,2006年1月25日に,東京・永田町にて「LCDパネル・メーカーの事業戦略研究 2006」の研究結果報告会を開催する。この報告会では,本調査研究レポートの内容のみならず,記載し切れなかった情報や最新の情報も多数盛り込みながら,主要パネル・メーカーの戦略の違いを明確に解説する。
(伊藤元昭=テクノアソシエーツ プリンシパル)
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