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スマートメーターとは 〜 なぜスマートグリッドに必要で、何が良いのか 〜
[2011/04/08]

 欧米で導入が進むスマートグリッド(次世代送電網)の構築において、送電網や配電網の自動化と共に不可欠とされているのが、スマートメーターの設置である(図1)。
 従来の電力計は、電力の消費量を機械式に計測、アナログのデータとして表示するだけの単純な機能しか持たない。このため、スマートメーターの普及が進んできた欧米では、従来の電力計のことを”dumb meter”(賢くない電力計)などと表現するようになった。一方、スマートメーターは、電力を電子式に計測する。また、メーターに内蔵されたマイコンを経由して、電力事業者が電力の開通や遮断といった遠隔制御を行ったり、通信機能によって電力事業者やホームエリアネットワーク(HAN)に電力消費データを送信したりすることが可能となっている。
 米国の電力産業では、アナログ電力計から始まり、計測がデジタル化されたデジタル式電力計、そして双方向通信機能が追加されたスマートメーターという形で進化してきた(図2)。

図1 米Southern California Edison社の
    スマートメーター 
(テクノアソシエーツが撮影)

図2 従来の電力計インフラ、AMR、AMIの比較 (テクノアソシエーツが作成)

スマートグリッド実現にスマートメーターが必要な理由
 一世代前のデジタル式電力計の技術は、米国の電力業界ではAutomated Meter Reading (AMR)と呼ばれる。AMRが導入された電力事業者では、電力計に内蔵された赤外線通信機能などによって、検針員が歩きながらセンサーの付いた自動検針器を電力計にかざして検針したり、自動車に乗ったまま電力計の付近を通過することで消費電力データの収集を半自動的に行ったりしていた。このようにAMRでは電力データのデジタル計測と検針の半自動化が達成された。しかし、電力データの検針に人手が介在するという意味では、従来型のアナログ電力計とそれほど大きな違いはない。検針の頻度も月に一回だけで、従来と変わらない。
 AMRのこのような課題は、デジタル電力計に双方向通信機能を追加することによって解決された。これが、スマートメーターである。スマートメーターやそれに接続された通信網などを含む、電力消費データ取得に関連する基盤技術は、スマートグリッドではAdvanced Metering Infrastructure(AMI)と呼ばれる。
 スマートメーターやAMIの仕組みは、電力消費データを、人手を介在せず自動的に計測し、毎日あるいは毎時間といった多頻度で電力事業者に送信することを可能にした。これによって、従来は困難であったピーク需要時の電力需要動向のリアルタイムでの把握、時間帯や電力需要によって動的に変動する電力料金プランの設定と適用、それに基づく電力需要抑制やピークシフトといったデマンドレスポンス(需要応答)の操作までをすべて自動化することができるようになったのである。また、消費者も、スマートメーターの電力消費データをHANに接続された宅内ディスプレイ(In-Home Display: IHD)上に表示させることによって、ほぼリアルタイムで確認することができる。これによって、電力消費の容易な「見える化」が実現でき、節電や省エネルギーも行いやすくなるのである。

新しいビジネスモデルはAMIをベースに発展
 米国でスマートグリッドやスマートメーターが脚光を浴びている理由は、節電や省エネルギーといった地味な面だけにあるのではない。GoogleやIBM、Cisco SystemsといったIT系企業、シリコンバレーを中心に全米に存在するスマートグリッド関連ベンチャー企業、それらに投資しているベンチャーキャピタルが期待しているのは、「エネルギー・インターネット」としてのスマートグリッドである。
 家庭内エネルギー管理システム(HEMS)やビル・エネルギー管理システム(BEMS)、デマンドレスポンス、電気自動車やプラグインハイブリッド車向けのスマート充電、Vehicle-to-Grid(V2G)など様々な応用技術がスマートグリッドで実現されると考えられている。これらの新しい技術では、電力のエネルギーとその情報の両方を扱う。すべての領域にわたる「エネルギー・インターネット」全体の市場規模が何兆円になるか、それを予測することすら難しいという専門家もいるぐらいだ。
 これらのスマートグリッドの応用技術は、すべて電力消費データを扱うことで成り立つ。その電力消費データの取得を行うデバイスがスマートメーターであり、そのインフラがAMIなのだ。スマートグリッドという用語の定義は、いまだに地域や文脈によって様々なようである。しかし、スマートグリッドで省エネルギーやデマンドレスポンスを行うために必要となる、電力消費の見える化がすべての応用技術の基になっていることが分かれば、AMIとその構成要素であるスマートメーターが不可欠であることは容易に理解できる。

 テクノアソシエーツでは、このようなスマートメーターやAMIの事業機会やビジネスモデルといった視点から、米国の企業事例や業界関係者のコメント、各種データを踏まえ、今後のスマートグリッドの普及と周辺ビジネスの事業性を検証し、その調査分析結果を「スマートグリッドのビジネスモデル(北米編)」としてまとめた。本レポート購入者を対象として開催する研究報告セミナーでは、レポートに掲載できなかった市場動向や技術情報、「DistribuTECH 2011」で取材した事例などについても紹介する。

(大場淳一=テクノアソシエーツ)


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