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EV+カーシェアリング=「究極のエコ・モビリティ」 環境,経済合理性,利便性など多くのメリットで普及の兆し
[2010/02/23]
テクノアソシエーツは,調査分析レポート「EVの普及と社会システムの変貌に潜む20の仮説」において,「EVは業務用車両から普及する」という仮説を提示している。ここでいう業務用車両には,バスやタクシー,レンタカー,企業や自治体の社有車や公用車,貨物を運ぶトラックなどが含まれる。これら業務用途の一つであり,最近よく指摘される「クルマ離れ」に反比例して急成長しているカテゴリーがある。カーシェアリングである。まだ実証試験段階の事例が多いものの,そのカーシェアリングにハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)などの次世代エコカーを採用するという動きも加速しつつある。 クルマ離れに反比例して急成長するカーシェアリング カーシェアリングの事業性にいち早く着目し,2002年に参入したオリックス自動車によれば,同社のカーシェアリング事業の会員数は「事業開始当初は5年かけて1000人の会員数でしたが,ここ最近では,3ヶ月で1000人の新規会員登録があります」(同社レンタカー営業本部カーシェアリング企画部部長 高山光正氏)という。カーシェアリングよりも歴史があり,兄貴分とも言えるレンタカー産業と比べると市場規模はまだごくわずかだが,その分伸び代も大きい。 カーシェアリングが公共交通手段の一つとして定着しているスイスでは,最大手のカーシェアリング会社「モビリティ(Mobility)」社の会員数が8万人を超えている。スイスの総人口は750万人あまりなので,普及率は約1パーセントだ。日本国内では,2010年2月の現時点で会員数が1〜2万人程度であると推定される。仮にスイスと同程度の1パーセントまで普及するとすれば,120万人規模の市場まで成長する可能性があると考えられる。実際,カーシェアリング市場の急成長に目を付けた業界は,レンタカー業界だけではない。近年になり,鉄道,不動産,駐車場,ガソリンスタンド,コンビニエンスストアなど多種多様な業種業態から続々と企業が参入している(図1)。
「究極のエコカー」EVはカーシェアリングと相性良し そんな中で目立つのが,カーシェアリング用車両としてHVやEVを導入するケースだ。例えば,EVの導入推進や普及に積極的な神奈川県は,レンタカー企業二社と提携して県の公用車の一部をEVとし,週日は県の業務用に,週末は一般ユーザーが両社からそれぞれ借りて使うことができる「EVシェアリングモデル事業」を2009年9月から2010年3月まで実施している。これは運用形態としてはレンタカーに近いが,自治体と消費者が自動車を共有するという意味でカーシェアリングの一形態と考えられる。そして,それをEVで行うことによって環境面での効果や県民へのEV普及啓蒙の効果という一石二鳥を狙った取り組みである。 EVの導入では,航続距離の短さや充電時間の長さなどが問題となることが多いが,カーシェアリングでは短距離・単時間の利用が中心となるため,現在の水準のEVでもほとんど問題なく運用できるのである。EV「i-MiEV」を既にカーシェアリング車両として導入開始しているオリックス自動車の高山氏は「カーシェアリングとEVは親和性が高い。カーシェアは基本的に2〜3時間の利用で,50km以下が80%を占める短時間,短距離の使い方であり,航続距離が短いEVに合っている」という。
EV+カーシェアリングで環境面の相乗効果に期待 カーシェアリングが普及すると,その地域の車両台数が減少し,渋滞の緩和や排気ガス・CO2排出量の削減に大きな効果が見込める。さらに,カーシェアリング用車両として排気ガスを一切排出しないEVを使えば,環境面でのメリットがより一層高まる。このため,神奈川県だけでなく,大阪府箕面市や茨城県つくば市など,EVを含めたカーシェアリングを導入する自治体が増加する傾向にある。 リチウムイオン電池の量産効果がまだ出ておらず高価なEVだが,共有して稼働率を高めることにより,社会全体として環境負荷の大幅低減,経済合理性の追求,渋滞の緩和による都市利便性の向上など,多くのメリットが見込める。今後,EVの市場投入と普及によって低価格化が進めば,EVカーシェアリングを導入する自治体や企業がさらに増加する可能性がありそうだ。 このほかにもEV/PHVの普及に向けた課題として,「蓄電池の低コスト化」,「充電インフラの整備」,「人々の意識の変化」の視点でさまざまな議論がある。テクノアソシエーツではこれら課題の視点から,業界関係者のコメント,各種データを踏まえ,今後のEV普及と周辺ビジネスの実現性を検証し,調査分析レポート「EVの普及と社会システムの変貌に潜む20の仮説」としてまとめた。
(大場淳一=テクノアソシエーツ)
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