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環境・電池の技術ロードマップと利用シーンの将来像


「電池交換型EV」というビジネスモデルの成功可能性
資本金の潤沢さと提携自動車メーカーの少なさの乖離をどう見るか

[2010/02/16]


 2010年1月下旬,電池交換型による電気自動車(EV)のインフラ事業を手がける米Better Place(ベタープレイス)社は,新たに3億5千万ドル(約315億円)の資金調達に成功したことを明らかにした。リーマンショック後の現在,欧米や日本など先進各国で厳しい経済情勢がいまだに続いている中,ベンチャー企業投資案件としては破格の大規模と言える。
 しかし,同社のEVインフラ事業はまだ本格的に開始はしておらず,提携を表明した自動車メーカーは2010年2月現在で仏ルノーの一社のみである。テクノアソシエーツが取材を行った各方面でも,「電池交換型EV」というコンセプトについて,懐疑的な見方をする関係者が比較的多かった。

クルマ離れの風潮や環境意識の高まりに合致
 一方のベタープレイス社は,同社が昨年の5月に横浜市で実施したバッテリー交換ステーション実証試験の会場アンケートの結果などを基に,ユーザーは電池交換型EVを受け入れるだろうと自信を示している(関連資料)。例えば,「バッテリーを自分で所有せず,共有することへの抵抗感はありますか?」という設問では,「共有したい」という回答者が38%,「共有したくない」が12%,「どちらでもよい」が50%となっている。この結果から,同社では,EVユーザーの88%が他のユーザーとバッテリーを共有することに抵抗感を持っていないと結論づけており,大規模な資金調達の成功とも相まって,同社が自信を深める背景となっているようだ。また,クルマ離れの風潮から自動車を単なる移動手段の道具,つまり「生活の足」としてしか見ない消費者も増加している。こういった社会変化や消費者の視点から考えると,リチウムイオン電池をまるごと交換することで短い航続距離,高価格や充電時間の長さといった現在のEVが抱える課題をすべて解決可能だとするベタープレイス社のビジネスモデルや主張が,違和感なくユーザーに受け入れられる可能性は少なからずあると考えられる。

イスラエルとデンマーク以外の国での普及がカギ
 ベタープレイス社の事業計画でEVインフラ構築と事業開始がもっとも早いのがイスラエルとデンマークの2カ国だ。イスラエルでは2011年から,デンマークでは2012年にサービスを開始する見込みである。両国では,地政学的な要因に基づく安全保障(イスラエル)や環境先進国としての社会需要(デンマーク)などの理由から,ガソリン車などに高率の税金を課す一方,EVへの課税をゼロまたは低率にすることにより,政策としてEVの普及を推し進めている。したがって,これらの国における同社のEVインフラ事業の成功の可能性は,他の国や地域と比較して高いと予想できる。
 では,これら2カ国以外の国ではどうだろうか。例えば,日本では今春からタクシー大手の日本交通とベタープレイス社による電池交換型EVタクシーの実証試験が東京都港区の六本木ヒルズを中心に開始される予定となっており,着々と準備が進められている(図1)。


図3:「EV・HEV駆動システム技術展」の九州電力ブース。中央の青い柱状の機器が200V単相普通充電器
図1:ベタープレイス社と日本交通が実施予定の電池交換型EVタクシー実証試験の概略


 ただ,日本全体では,EVやハイブリッド車(HV)などの次世代エコカーを優遇する政策は施行されているが,上述のイスラエルやデンマークほど強制力のあるものではない。さらに,EVとHVのどちらが実用的で経済的かを考えると,EVに全面的に移行するにはまだ時期尚早と言わざるをえない。また,自動車メーカーも,国内大手のトップ2社はHVを重視した事業戦略を取っている。EVはHVで出遅れたメーカーの巻き返しという色彩が色濃く,それも現状では自社で開発した電池固定型EVでの事業展開が中心となっている。

 自動車が日常的な移動手段として欠かせない米国でも,電池交換型EVの導入を決定しているカリフォルニア州やハワイ州を除けば,同社のEVインフラ事業を導入する地域の開拓はまだこれからだ。提携先となる自動車メーカーや自治体,政府を今後どれだけ増やせるか,また消費者の支持をいかに獲得できるかなど,シャイ・アガシCEOらベタープレイス経営陣の真価がいよいよ問われることになるだろう。

 このほかにもEV/PHVの普及に向けた課題として,「蓄電池の低コスト化」,「充電インフラの整備」,「人々の意識の変化」の視点でさまざまな議論がある。テクノアソシエーツではこれら課題の視点から,業界関係者のコメント,各種データを踏まえ,今後のEV普及と周辺ビジネスの実現性を検証し,調査分析レポート「EVの普及と社会システムの変貌に潜む20の仮説」としてまとめた。
(大場淳一=テクノアソシエーツ)


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