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リチウムイオン電池の低価格化はアジア勢が主導 輸入車や改造車のEVで搭載が進む
[2010/01/29]
電気自動車(EV)の普及に積極的なある自治体の担当者によれば,中国では電動バスがすでに50台以上走っており,今年の5月から開催される上海万博までには,それが200台まで増やされる計画があるという。実際,中国では北京や上海などの主要な大都市で日常的にトロリーバスが走っており,電動のバイクも日本より早く普及が進みつつある。そういった状況では,車両の電動化に対する抵抗感や過剰な期待もあまりないようだ。中国は北京をはじめとして上海,杭州,武漢など13のモデル都市を指定し,バスやタクシーといった公共交通機関からEVやハイブリッド車(HEV)の導入を進めている。 リチウムイオン電池とEV/PHVの開発で注目を集めるBYD社 中国のEV開発で最も注目を集めているのは,BYD社だ。BYD社は,2008年に米国の著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏が同社の株式約10%を2億3千万ドルで取得することを明らかにして以来,リチウムイオン電池やEVの関係者の間で常に話題にのぼるようになった。今月24日まで米国ミシガン州のデトロイトで開催されていた「North American International Auto Show(デトロイトモーターショー)」において,BYD Auto社は,EV「e6」を2010年末に発売することを明らかにした(図1)。 e6は,一回の充電で約400kmの走行が可能としている。e6に搭載するリチウムイオン電池はリン酸鉄系であり,その容量は約60kWhである。これまでのところBYD社は日本国内でe6を発売する予定など何も発表していないが,北米市場では三菱自動車の「i-MiEV」や日産自動車の「リーフ」などのEVと競合することが予想される。また,BYD社はEVだけでなくプラグインハイブリッド車(PHV)「F6DM」も発表しており,トヨタ自動車の「プリウス プラグインハイブリッド」と競合する可能性もある(図2)。 このような現状について国内電池メーカーのある技術者は「かつての半導体や液晶のように中国・韓国メーカーには日本から引き抜いた技術者がいっぱいいる。日本に産業戦略がなければ,電池も二の舞になる」と警鐘を鳴らしている。
中国ThunderSky社のリチウムイオン電池は「コンバートEV」で採用が進む 一方,まだ大きな流れとなってはいないものの,今後のクルマの電動化を考えたときに現在出回っている既存の中古車両をベースに改造してEVにするといった方向性も考えられる。いわゆる「コンバートEV」だ。米国のシリコンバレーを本拠地とするTesla Motors社の「Tesla Roadster」も英Lotus社のスポーツカー「ロータスエリーゼ」の車台をベースにしているという意味では,広義でコンバートEVの一種と言えるかもしれない。コンバートEVは,既存の市販車両を改造して作るため,モーターと電池を入手可能で,EVへの改造の方法さえ知っていれば,比較的簡単に作ることができるとされる。 国内では,市民団体である「日本EVクラブ」(代表 舘内端氏)がコンバートEVの分野で有名である。同クラブではEV愛好家が情報交換やイベント開催などを積極的に行っている。昨年の11月に同クラブが筑波サーキットで開催した「第15回日本EVフェスティバル」では,日本国内の各地から1000名以上の参加,それぞれのコンバートEVを披露した(関連記事)。
そういったコンバートEVの多くは,高性能なリチウムイオン電池の価格がまだ高いことから,一般の自動車で現在使われている鉛蓄電池を何個も搭載している。しかし,中国ThunderSky社のように,EVに使用可能なリチウムイオン電池を国内外に広く販売するメーカーが出てきたことで,コンバートEVにもリチウムイオン電池が普及する可能性が高まってきた。例えば,同クラブのある会員がスズキの軽自動車「アルト ハッスル」をベース車両として製作したコンバートEVには,ThunderSky社のリチウムイオン電池「LFP900」を40個搭載,約13kWhの電力量を確保している。このEVは日常的な通常走行での使用に十分耐えていると見られる(図3)。 このほかにもEV/PHVの普及に向けた課題として,「蓄電池の低コスト化」,「充電インフラの整備」,「人々の意識の変化」の視点でさまざまな議論がある。テクノアソシエーツではこれら課題の視点から,業界関係者のコメント,各種データを踏まえ,今後のEV普及と周辺ビジネスの実現性を検証し,調査分析レポート「EVの普及と社会システムの変貌に潜む20の仮説」としてまとめた。
(大場淳一=テクノアソシエーツ)
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