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日本の電池の優位性,「5〜10年は続く」 業界関係者のアンケート調査結果から(2)
[2010/01/18]
テクノアソシエーツは,電気自動車(EV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHV)の普及に向けた課題を明らかにするため,EV/PHVの製造や利用にかかわる業界関係者に対し,アンケート調査を実施した※)。EV/PHVの基幹部品であるLiイオン電池は,太陽光発電などの自然エネルギーと組み合わせる蓄電池としての活用も期待されることから,その進化は業界関係者が注目している。今回のアンケート調査結果から,Liイオン電池は低コスト化を急速に進めなければならない一方で,性能に加えて信頼性が重要となり,それらを併せ持つことで「日本は優位性を発揮しなければならない」というメッセージを読み取ることができる。 2020年までに定置型が普及 まず,住宅やオフィスにおける定置型蓄電池の普及時期についてである。日照量によって発電量が変動する太陽光発電と組み合わせたり,電気代が安い夜間電力を貯めて昼間に使ったりといったエネルギーの有効利用が,蓄電池の設置によって可能になる。その普及時期がいつになるかという設問であるが,答えは基本的に蓄電池の価格次第ということである。2020年までには蓄電池の価格が十分に下がり,普及する(すべき)という回答が30%で最多となり,次いで2015年までに普及する(すべき)という回答が22%となった。よく話題として挙がる「EV/PHVが動く蓄電池とし定置型の役割も果たす」という選択肢も用意したが,それを回答したのは以外にも16%と少なかった(図1)。家の自動車の多くは昼間は止まったままで稼働していないという一般論があるが,蓄電池のコストが下がればEV/PHVは家の蓄電池のメインではなく,補助的な利用にすぎないというわけである。
中大型で「10年で1/10のコスト」 その蓄電池であるが,「2020年までに中大型Liイオン電池コストがどこまで下がる必要があるか」を聞いた。ここでは,電池のkWh単価を選択肢で回答する形式とした。その結果,現在の1/10のコストに相当する1〜2万円/kWhまで下がる必要があるという回答者が過半数を占めた。さらに,1万円/kWhを切る必要があるとした回答者を合わせると,90%が「2万円/kWh(20円/Wh)以下」と答えたことになる(図2)。これは「10年で1/10のコスト」に下がることを意味する。過去に円筒型Liイオン電池(18650型)が1994年の300円/Whから2008年の22円/Whまで14年で1/15に下がったことを考えると,それほど現実離れした話ではない。
性能と信頼性で競争力を発揮 そして,「Liイオン電池で日本企業の優位性はいつまで続くか」を聞いた。選択肢は,今後5年未満,今後5〜10年程度,今後10年以上の三つである。結果は,今後5〜10年程度との回答が45%と最も多く,次いで今後5年未満という悲観的な回答が22%,今後10年以上とした楽観的な回答が19%と僅差で続いた(図3)。 楽観的な回答の多くは,願望も含まれるが,自動車や住宅に使われる中大型は価格で決まる世界ではなく,性能と信頼性を兼ね備えていることが重要であり,「日本製は競争力を発揮できる」とする見方である。その一方で,半導体や液晶パネルと同様に中国や韓国のアジア勢がコスト競争力を強みに台頭してきている。民生機器向け小型電池のある領域ではアジア製が席捲したことから,中大型電池でも予断を許さないという危機感が悲観的な回答につながった。こうした両面から,日本の優位性は「5〜10年」という中間的な回答が最多になったと見られる。
このほか,EV/PHVの普及に向けた課題として,「蓄電池の低コスト化」,「充電インフラの整備」,「人々の意識の変化」の視点でさまざまな議論がある。今回、テクノアソシエーツは、これら議論について調査分析レポート「EVの普及と社会システムの変貌に潜む20の仮説」としてまとめている。
(朝倉 博史=テクノアソシエーツ)
※)アンケート調査の方法 本調査では,EV/PHVの製造や利用にかかわる電池メーカー,自動車メーカー,タクシー会社,住宅メーカー,小売り店舗,石油元売り,電機メーカー,電力会社,地方自治体など約40社・団体に対して対面形式でヒアリングした。有効回答数(N)は36である。 |
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