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「病院から地域・在宅へ」医療連携を促進するICT活用事例
[2013/01/24]
診療所がインターネット経由で中核病院のカルテ情報を参照 病院中心の医療から地域医療連携や在宅医療への転換が進む中、ICTを活用した医療連携が全国各地で進みつつある(関連記事)。地域医療連携で成功しているケースの一つとして関係者の注目が高いのが、長崎県の「あじさいネット」である。長崎県内の診療所や調剤薬局などが、患者の同意の下、インターネット経由で中核病院のカルテ情報を診療利用するICTを使った地域医療連携の仕組みで、2004年にシステムが稼働した。現在では、長崎県内の主要病院のほとんどが参加する連携システムに発展している。 主な機能は、紹介元の診療情報の閲覧や高度医療機器の共同利用などの診療支援機能と紹介患者の診療情報を使った学習など医療従事者の教育支援機能の二つで、これにより地域全体の医療の質向上に貢献している。 情報の流れを病院から診療所への片方向に限定することで、情報提供病院にウェブ・サーバーを設置し、閲覧者がインターネット感覚で病院システムに直接アクセスする仕組みを構築している。多大なコストがかかる地域サーバーを設置する必要がなく、利用者の負担を軽減した。全国各地のICTを活用した地域医療連携ネットワークが、初期投資や維持コストの高さなどによって軌道に乗らないケースが多い中、あじさいネットは国からの補助金に頼らずに、診療所、病院が現実的なコスト負担で運用できる仕組みを構築した(図1)。 多職種連携を促進する在宅医療におけるICT 在宅医療の現場では、スマートフォン(スマホ)やタブレット端末の活用による医療介護連携が進んでいる。東京・神奈川の合計三つのクリニックで在宅医療サービスを展開している医療法人社団プラタナスでは、院内外の多職種での連携を促進するため、医療系を含む様々な既存アプリやオンライン・ツール、クラウド・サービスなどを積極的に活用。多大なコストや労力をかけずに、在宅医療現場のニーズに合致したシステムを構築している。医師の事務作業を軽減し、医療行為に集中できる環境を整備することで、訪問診療時間の増加などの効果を生み出している。 「以前だったら電子カルテシステムの機能に合わせて仕事をしていたため、在宅医療のニーズや流れに必ずしも合致していなかった。既存のアプリやクラウド・サービスなどを使うことで、現場ニーズに柔軟に対応するシステムを安価に構築できた」と桜新町アーバンクリニック院長の遠矢純一郎氏は語る。 例えば、「Dropbox」や「Good Reader」などのアプリで、スマホから院内共有ファイルにアクセスしたり、訪問スケジュールを管理したり、スマホで作成した紹介状などの文書をメール経由で相手にFAXできるサービス「InterFAX」なども利用している。また、文献や学会ガイドライン、治療マニュアルなども電子化してスマホに入れておくことで、電子書籍のように在宅現場で参照でき、重い書籍を持ち歩く必要もなくなったという。 また、介護ヘルパーやケアマネージャーなど院外の連携先とは、地域連携システム「EIR」を導入し、クラウド上で情報共有している。多職種かつ多事業所に所属する医療介護スタッフが書き込む電子掲示板のような仕組みで、患者の情報や在宅ケアの訪問メモ、画像の掲載、医師への質問、スケジュールなどのデータを書き込むことができる、クラウド上で共有できるアプリケーション。パソコンだけでなく、携帯電話からでも利用できる。利用料は1患者あたり500円(40人まで固定料金。40人以上は割引料金あり。別途、初期費用)で、有料申込をした事業者・施設(有料施設)が負担する。有料施設から管理者を設定し、対象の患者ごとに関係する医療従事者を招待する。招待者は無料で利用できる。 今回、テクノアソシエーツでは、医療ICTの先行事例を踏まえ、調査レポート「医療のICT活用、先行事例に見る成功の秘訣」としてまとめた。本レポートは、ICTに期待する医療現場の生の声を拾い上げ、そこから得た共通の課題を抽出することで、ICTを活用した医療連携の方向性を展望した。 (次回の記事では、ICTに関わる企業にとって大きなビジネス機会として期待が高まる医療連携における成功要因とICT企業の対応策を紹介します)
(テクノアソシエーツ=笹木雄剛)
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