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「病院から地域・在宅へ」拡大する医療ICTの利用機会
[2013/01/08]
日本の医療体制、医療提供の仕組みが大きく変わろうとしている。医療財政の危機、医師の絶対数不足、高齢化による慢性疾患の増加、医療技術の進歩による寿命延伸など、様々な背景が複合的に絡み合っている。しかし、今後は増加の一途を辿ることが確実視されている患者に対し、人材、病床、医療技術、財政など有限の医療資源の中で効率的に医療サービスを提供し、患者満足度を向上させることが求められている。 例えば、地方の公的病院における産科・小児科などの閉鎖や病院自体の閉院、妊婦のたらい回しに代表される救急医療の問題など、地域における医療体制の崩壊が顕在化している。また、今後、都市部でも高齢者の増加が深刻化する。 こうした状況に対応していくために、「地域医療連携・在宅医療」への転換が急務となっている。患者の病状や緊急性、ニーズなどに応じて、地域の診療所、急性期病院、療養型病院、回復期リハビリテーション病院、訪問看護ステーション、介護施設などが連携して、それぞれの機能に応じて適切な医療サービスを提供することが、医療の効率化や医療従事者の負担軽減、医療の質向上につながるからだ。 ICTの活用で空間的・時間的制約を解消する 地域医療や在宅医療では、限られた医療資源を有効活用し、1人でも多くの患者をケアするために、病院の医師や看護師だけでなく、かかりつけ医や訪問看護師、ケアマネージャーなど、それぞれ他施設に所属する多職種がチームとなって連携し、医療と介護が一体化した地域ケアシステムを提供していく必要がある。 そこで威力を発揮するのがICTである。従来の病院を中心とした医療では情報の発生からサービスの提供まで一つの病院内で完結していたが、在宅医療や地域医療連携になると情報源は各患者宅、医療機関、介護施設などに分散している。このため、空間的、時間的な制約を解消するICTを活用して、多職種での情報共有やコミュニケーションを促進し、情報の垣根を取り払うことが、医療サービスの向上に必要となる。 例えば、在宅医療は、患者宅(院外)での診察が中心で、患者宅や車での移動中など、いつどこで急患患者から連絡が入るか分からない。また、必要な検査をその場で実施することもできないし、人的リソースも病院に比べて少ない。業務を効率化し、リソースを有効活用し、100%のパフォーマンスを発揮するためには、過去の診療データや他職種の報告データなどを参照しながら臨機応変に適切な医療を提供する必要がある。これまでは患者宅に手書きの連絡ノートなどを置いて、多職種との情報共有を進めていたが、リアルタイム性や利便性で十分とはいえなかった。地域医療連携においても、不必要な検査や投薬を防ぐために、病院、かかりつけ医が実施した治療情報を共有し、効率的な医療を展開することが求められる(図1)。 実際にICTを活用した医療連携は全国各地で進みつつあり、地域医療を支える重要なツールとして機能している例も出てきている。 テクノアソシエーツでは、こうした地域医療連携・在宅医療への転換とICT利用機会について、ICTに期待する医療現場の生の声を拾い上げ、そこから得た共通の課題を抽出することで、ICTを活用した医療連携の成功要因を明らかにし、この度、調査レポート「医療のICT活用、先行事例に見る成功の秘訣」としてまとめた。医療機関などへの訪問取材をもとに、ICTを活用した医療連携の先進的18事例を紹介するとともに、医療連携でICT企業が対応すべきことを示唆する。 (次回記事では具体的事例を紹介します)
(テクノアソシエーツ=笹木雄剛)
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