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トヨタが15万円HVシステム原価を4代目プリウスで実現した後の世界
[2013/01/09]
トヨタ自動車は、歴代プリウスごとに“HVシステムの生産コスト半減”を社内目標に置いている。初代プリウスでは約60万円、3代目で約30万円と言われ、4代目では主要システムの量産、さらなる内製化を通じて、3代目の半分つまり15万円を目標に開発しているようである。「次(4代目)のプリウスに搭載するハイブリッド・システムも半減する」(トヨタ自動車HVシステム開発室長の高岡氏/日経エレクトロニクスより引用)と自らも目標を掲げている程である。 ある時点でHVシステムの生産コスト半減が実現された場合、15万円のHVシステムコストは、ユーザーにとっては内装やカーナビなどオプションを扱う感覚に近いものとなり、購入ハードルが下がる。そのため、一気にHVの普及が進む可能性がある。競合する海外のディーゼル・ターボなどガソリン車と比べたコスト上昇分が、ユーザー価格で約30万円程度で提供されており、価格面でも優位に立つ可能性が高い。 トヨタが安くて良いクルマが開発できそうなことは分かった、次に同社のその生産を含めた展開力について考察してみる。現在、同社は米・中・英・仏・豪・加・タイ・インドネシア・日本の9拠点でHV製造戦略を展開し、2015年までにHV、PHVの新型車を10車種投入する予定である。同社の生産しているHV車の生産拠点を見ると、展開している地域や工場数を見ただけでも、既にHVは世界中で生産できる状況になっていることが見て取れる(図1、図2)。トヨタのHVは混流生産により既存エンジン車の生産拠点にHV車のラインを追加する形で展開できる。このため、HVに切り替え次第、直ちに生産可能な工場やHV導入工場で生産比率を上げることで、短期間に展開できるHV車の製造余力は膨大な規模となる。HV混流生産がすぐに展開できる工場候補を記載してみると、トヨタは本格的なHVの世界展開をいつでも始められる状況にある。 2012年の同社HV販売台数は、国内約70万台、海外約50万台で合計約120万台程度である。市場から要望され同社がその気になれば、現在50万台程度である海外販売分は、図1に記載した工場生産の総和、約250万台程度まで生産する製造余力がある(海外ではあと5倍生産できる)。 さらに、同車種でHVを生産していない工場(例:カムリは生産しているが、カムリHVは生産していない工場)が6工場あり、全部で推定150万台ほどの製造余力が上乗せされる。 価格競争の点でも電動車の部品供給や製造拠点・製造設備のグローバルな展開が必要となっている。電動車製造でもコア部品も含めた現地一貫生産へ突入している。このため部品メーカーは電動車でも開発段階からの海外現地対応が重要になりつつある。HVの海外生産でもKD生産から電動部品を含め「開発から一貫生産まで全て現地化」の時代へと変化していく。 15万円のHVシステム実現、その後は標準装備へ トヨタの電動車戦略の今後に関しては、HVの量産展開は準備できつつある。現在、開発を進めている4代目プリウスでHVシステム原価を15万円に抑えられれば、その後は多くの車種でHVシステムを標準装備させ、価格の安いHV車を一気に世界展開することも可能になる。 4代目プリウスが2014年末(予測)に販売されると、翌年から他の車種にも15万円のハイブリッド・システムが準備され、2〜3年後には本格的な普及の動きが想定される。さらに、その先を拡大解釈した場合、2020年頃には同社の車の大半でHVが標準装備となるような戦略を推し進め、その時はむしろガソリン車が特別に扱われるといった可能性も否定できない。トヨタ自身もハイブリッド技術の全モデル展開を進め、「グローバルビジョン2020」では、全車種でハイブリッド設定の方針を掲げている。安価なシステムとHVの生産拠点が整った後、テーマは部品を含めた一貫生産や現地開発に向い、部品メーカーとしても開発段階からの現地対応が求められる。 テクノアソシエーツでは、(1)完成車メーカーの製造戦略、(2)Tier1を始めとした部品メーカー戦略、(3)電動コア部品動向、(4)米国、欧州、中国、東南アジアの電動車市場と製造戦略、といった四つの視点から、調査レポート「製造戦略から見たHV・PHV・EV動向 〜部品メーカーの電動車戦略とOEMの調達・内製化はどこまですすんでいるのか?」としてまとめた。電動化によって大きく変わる自動車産業を分析・展望している。
(テクノアソシエーツ=木村 勲)
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