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米GM、PHEV「Chevrolet Volt」の販売が好調に
[2012/10/15]
米国自動車大手General Motors(GM)のプラグインハイブリッド車(PHEV)「Chevrolet Volt(シボレー ボルト)」の販売が好調に推移している(図1)。同社が2010年12月にボルトの販売を開始してからしばらくの間、販売台数は伸び悩んでいた。ところが、2012年に入ってから販売台数が増加しつつある(図2)。この8月には2,831台と発売以来の最多販売台数を記録した。ボルトの販売台数は、充電可能な電動車両として競合するトヨタ自動車の「プリウスPHV」(同1,047台)や日産自動車の電気自動車(EV)「リーフ」(同685台)も凌駕している。ボルトより高額な同社の高級スポーツカー「Chevrolet Corvette(シボレー コルベット)」の販売台数も上回るようになった。両車の2012年1〜5月の累積販売台数は、ボル7,057台、コルベットが5,547台である。
背景にあるのはHOV車線での優遇 ボルトの販売が伸びている理由はいくつかあるが、最大の理由は同車がGMでは唯一、米国の高速道路におけるHOV*1車線を運転者1名のみでも走行可能な電動車だからである。 東海岸のニューヨークやカリフォルニア州のロサンゼルスなど米国の大都市圏では、朝は都心方向、夕方はその逆方向で発生する渋滞が慢性的な社会問題となっている。そこで、相乗りを奨励することで混雑する方向への車両台数を減らし、渋滞を緩和するために導入されたのがHOV車線である。一般にHOV車線では2名以上が乗車する自動車しか走行できないが、その条件を満たす自動車は少ない。このためHOV車線は一般車線より空いていることが多く、この車線を走行できれば目的地に早く到着できる。まだ高価な環境対応車を普及させる優遇策として、このHOV車線で運転者だけでも例外として走行することを許す地域が近年増加しつつある。従来はハイブリッド車(HEV)がHOV車線での優遇措置を受けていたが、それをEVやPHEVが置き換え始めた形だ。 政府の補助金やGMの販売奨励策もVoltの販売を後押し HOV車線を走行可能という優遇策に加えて、高価格を緩和する政府の補助金やGM自身によるディーラーへの販売奨励策もボルトの販売を後押ししている。ボルトには16kWhのリチウムイオン電池パックが搭載されており、購入者は連邦政府の補助金7,500米ドル(約59万円)を受け取れる。ボルトを数十台単位で販売するあるディーラーにはGMから販売奨励金として10万ドル(780万円)が支払われたと報じられている。また、GMディーラー網の一部店舗では通常月額279ドル(約2万2,000円)の2年間リースを同169ドル(約1万3,000円)と大幅に値引きした形で提供しているという。 大企業や政府機関もEV/PHEV普及の下支えに ただ、値引き幅が拡大したとはいえ、元々の車両価格が高いことは否めない。結果的に現在ボルトを購入する個人は、おカネより時間を大切にする高所得者で環境問題への配慮に関心のある層が中心とみられる。そんな中、ボルトを購入する市場セグメントがもう一つある。大企業や政府機関などにおける法人需要の市場だ。 例えば、この9月上旬に国防総省(DOD)が1500台のボルトを購入し各地に配備すると米国では報じられている。大企業でも同様の動きがある。スマートグリッド事業に注力する米General Electric社は、2015年までと中期的な計画で1万2000台と大量のボルトを社有車として購入することを明らかにしている。いずれの動きでも、電動車両を2015年までに100万台普及という公約を掲げる米オバマ政権による何らかの働きかけがあったとみられる。 この他にもEV/PHVの普及に向けて、自動車各社の事業戦略、カギとなるリチウムイオン電池技術、充電インフラ整備状況などに関する様々な議論がある。テクノアソシエーツでは、こうした視点で、調査レポート「自動車メーカーの電動車戦略・将来展望 2012-2013」としてまとめ、電動化によって大きく変わる自動車産業を分析・展望している。
(テクノアソシエーツ=大場淳一)
*1:High Occupancy Vehicle。HOVでの相乗りを米国ではcarpool(カープール)と呼ぶ。
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