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将来予測から見える蓄電池産業の課題
[2011/03/04]

 テクノアソシエーツは、電気自動車(EV)の動向を踏まえた蓄電池の市場、コスト、技術に関連する10の論点を抽出、2015年までに起こる蓄電池業界のトレンドを予測した。そこからは、各メーカーのグローバル競争の行方が予想できるだけでなく、蓄電池産業で今後取り組むべき様々な課題が見えてくる(図1)。

図1 2015年までに起こる10の予測
「2015年に蓄電池業界はこうなる〜10の論点で蓄電池の将来を予測〜」(発行:日経BPクリーンテック研究所、調査:テクノアソシエーツ)から引用。

顧客は自動車メーカーへ
 (1)「世界の電池メジャーは8社に絞れられる」、(3)「電池のコスト競争力は規模、材料、構造で決まる」からは、電池メーカーがグローバル競争で勝ち残るための条件が明らかとなる。電池メーカーにとって特に重要なのが顧客を獲得するための“営業力”であり、それが生産規模を拡大し、コスト競争力につながる。顧客となる相手は、かつては電子機器メーカーだったのが自動車メーカーに変わり、ニーズや文化が従来とは大きく異なる。その違いにいち早く対応し、自動車メーカーと密接な関係ができたところが勝者となる権利を得る。
 (2)「電池の低コスト化はEVが牽引する」、(6)「BMSは企業間で技術的な差がなくなる」、(7)「汎用の『18650』は大型電池で主流にならない」、(8)「定置型電池はEV向けの転用がメインとなる」から分かることは、もはや大型電池のコスト・リーダーは自動車用電池ということである。汎用の「18650型」も従来を上回るペースでコストダウンをしていかないと自動車用電池には勝てない。また、定置用に特化した専用の大型電池を製品投入する場合、特別な差異化要因を見いだして自動車用電池との真っ向勝負を避ける以外、市場に残る要素はあまりない。
 (4)「中国の電池メーカーは世界を席巻しない」、(9)「電池生産は一極集中型から地産地消型へ」、(10)「政府の支援策が電池の市場成長を促す」から、中国の電池メーカーが人件費の安さで勝負しても自動車用電池では通用しないという状況が見える。むしろ、自動車の消費地で生産する“地産地消”が有利となり、電池メーカーは積極的な海外展開が求められる。ただし、中国市場に限っては、政府主導のエネルギー政策の影響力が強く、中国の電池メーカーが優遇されることが予想される。海外企業があえて中国市場に進出するには、中国の中央政府または地方政府と連携するなどの対応策が求められる。
 (5)「Fe系電池はマイナーな存在になる」では、Fe系電池の課題が浮き彫りとなった。Fe系は、材料の微粒子化やカーボン被覆、不純物の排除などプロセス上の特別な処理をしないと使いものにならない。これらの処理を低コストで実現する手法の確立が急務となる。

 テクノアソシエーツは、EVの動向を踏まえた蓄電池の市場、コスト、技術に関連する10の論点を抽出、2015年までに起こる蓄電池業界のトレンドを予測し、調査レポート「2015年に蓄電池業界はこうなる」(発行:日経BPクリーンテック研究所)としてまとめた。2011年3月18日、4月15日、5月20日には、本レポート購入者を対象とした研究報告セミナーを開催する。

(テクノアソシエーツ 朝倉博史)


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