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EVタクシー,東京でも営業運行が始まる 次世代エコカー技術を巡る業界標準バトルはタクシーから
[2010/04/27]
4月26日,日本交通は米Better Place(ベタープレイス)社が開発した電池交換技術による電気自動車(EV)を世界で初めてタクシーとして採用,同日から都内で営業運行を開始した(図1)。このEVタクシー運行は,経済産業省資源エネルギー庁による平成21年度電気自動車普及環境整備実証事業の一環として今年の7月末まで行われる。一方,日の丸リムジンは先月下旬より都心の丸の内・大手町・有楽町地区を中心として東京都では初めて三菱自動車の電気自動車「i-MiEV(アイミーブ)」2台によるコミュニティタクシーの運行を開始している(図2)。 電気自動車やプラグインハイブリッド車(PHV)をタクシーに採用する動きでは,愛媛県や新潟県,京都府など首都圏以外の地域が先行していた。今年に入り都内で上記二社が営業運行を開始したほか,神奈川県もEVタクシーを今年度から2年で100台導入する計画を明らかにしている。今年末から日産自動車がEV専用車「LEAF(リーフ)」の販売を開始すると,タクシーへのEVやPHV導入がさらに加速する可能性もある。
日の丸リムジンは走行エリア内の急速充電器を活用 アイミーブをEVタクシーとして採用した愛媛県や新潟県では,事前の予約を基本としたハイヤーとしての活用が主である。この理由は,電気自動車の走行距離が従来車に比べて短く,充電にも時間がかかることなどによる。普通のタクシーで一般的な「流し」や「付け待ち」(駅や街中の客が拾いやすい場所などで客待ちをすること)は,現在の電気自動車では困難であることによる運用上の工夫であると言える。 一方,日の丸自動車のコミュニティタクシーでは,運行エリアを丸の内地域と限定してはいるものの上記の先例とは異なり従来のタクシーのような流し運行も行うとしている。これを可能としているのが,首都圏では整備が進んできた急速充電器の存在だ。丸の内地域では,鍛冶橋駐車場や丸の内パークビルなどに急速充電器が設置されている。このため,バッテリーの電気容量が少なくなると,それらの急速充電器によって充電すれば電気切れの心配なく運行を続けることができるのだ。EVの充電にはガソリンやLPGの補給よりも時間がかかるのが運行上の課題ではあるものの,交通量の多い都心部では大気汚染の元となる排気ガスや地球温暖化ガス(CO2)を一切出さないというメリットは大きい。 日本交通は米ベタープレイスと世界初の電池交換式EVを運行開始 一方,日本交通はベタープレイスの電池交換技術を使ったEVタクシー3台で営業運行を開始した。こちらも都内の山手線内が中心で六本木ヒルズを中心としたエリアでの営業運行となる模様だ。電気の補給は港区西新橋に設置されたバッテリー交換ステーションで,バッテリーパックの交換によって行う。ベタープレイスによれば,バッテリーの電気残量や走行可能距離をモニターで常に把握できるため,運転手は電気切れの心配なく運行が可能であるとしている。アイミーブやリーフの場合,急速充電器ではバッテリーが空から充電すると80%の充電に30分かかるが,ベタープレイスの電池交換は約1分で完了する。このため,バッテリー交換ステーションの整備が進めば内燃機関を用いた従来のタクシーとほぼ同じようにEVタクシーを運行できるようになる可能性がある。 次世代エコカー技術の本命技術を巡る覇権争い ベタープレイスのシャイ・アガシCEOは,次世代エコカーの技術として有望なものに電池交換式EV(同社のような方式),電池固定式EV(アイミーブやリーフなど),プラグインハイブリッド車の三つを挙げている(図3)。 これらの三種とも日本でタクシーとしての営業運行が開始されているという意味で,アガシ氏の主張通りの展開になっていると言える。ただ,これらの三種がすべて今後の10年から20年の間共存できるのか,いずれかが淘汰されるのか,はまだ何とも言えない状況だ。
ベタープレイスのオープニングセレモニーでは,三菱重工業副社長の福江一郎氏が,電池交換式に賛同する自動車メーカーがまだ少ないことを認めていた。一方,中国で現在開催されている北京国際モーターショーでは,ベタープレイス社が奇瑞汽車(Chery Automobile)社と提携することが明らかにされた。日本や米国を抜き,世界最大の自動車市場となった中国で電池交換式がデファクト標準の技術になる可能性もある。今後もEV充電インフラの動向からは目が離せない状況が続きそうだ。 このほかにもEV/PHVの普及に向けた課題として,「蓄電池の低コスト化」,「充電インフラの整備」,「人々の意識の変化」の視点でさまざまな議論がある。テクノアソシエーツではこれら課題の視点から,業界関係者のコメント,各種データを踏まえ,今後のEV普及と周辺ビジネスの実現性を検証し,調査分析レポート「EVの普及と社会システムの変貌に潜む20の仮説」としてまとめた。
(大場淳一=テクノアソシエーツ)
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