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EV充電インフラ: 技術・市場の動向
[2009/09/15]
電気自動車(EV)元年と言われる2009年。三菱自動車工業や富士重工業が量産を志向したEVを発売し,日産自動車はEV専用車「リーフ」の発表を8月初旬に横浜の新社屋で大々的に行った。 環境対応車(エコカー)の本命とも言われるEVの相次ぐ市場投入や発表は,自動車がすぐにでも内燃機関からモーターと電池へと構造変化を起こすと思わせる。しかし,従来の自動車がガソリンスタンドとの二人三脚で普及してきたように,EVも充電インフラの整備が必要不可欠である。 本稿では,EVやプラグインハイブリッド車(PHV)の普及において,重要な役割を果たすと考えられる充電インフラの技術概要と市場動向,特に企業や自治体による充電インフラへの取り組みの現状と事例をレポートし,EV市場への関連やEV普及への影響を考察する。
(大場淳一=テクノアソシエーツ)
EV/PHV用充電および関連技術の概要 EVやPHVの充電においては,電圧(100Vまたは200V)と位相(単相または三相)の組み合わせにより大きく別けて3通りの方式がある(図1)。 図 1 EV/PHVの主な充電方式 (出典:「環境・電池の技術ロードマップと利用シーンの将来像」) 電圧・位相による種別および適用 普通充電:100V単相交流 まず,現在一般に最も広く使用されている100ボルト単相の交流電圧をEVやPHVの充電にも用いるのが基本となる。この場合,EVやPHVへの充電用ケーブルのプラグを通常のコンセントに差し込むだけでよく,EVを駐停車する場所に普通のコンセントさえあれば良いだけであり,最も容易にEVの充電が行える。しかし,容易で手軽な反面,充電時の電力が小さいため,EVやPHVの大容量2次電池の充電には非常に長い時間(三菱自工の「i-MiEV」の満充電に14〜15時間)がかかってしまうのが欠点である。 普通充電:200V単相交流(倍速充電) 次に,位相は単相ながら電圧を2倍とするのが,200V単相交流による普通充電で,倍速充電とも呼ばれる方法である。これもEVとPHVのいずれの充電にも利用できる。200ボルトの電力は,まだあまり一般的ではないが,1980年代以降に建築された住宅や施設などでは,200Vに対応した単相3線式の配電系が採用されている。このため,200ボルトの電圧が供給されている世帯や事業者数は既に過半数を占めると見られる。 また,安全性や利便性に優れ,家庭のエネルギー源を電気だけにしてガス代をゼロ円にできる「オール電化住宅」の増加により,200V対応の家電機器も次第に普及しつつある。このように,100V単相交流より敷居は高いものの200V単相交流は比較的容易に導入できる場合が多いこと,充電時間が100Vの半分で済むことなどから,EV普及において200V単相交流の使用が今後普及する可能性が高い。 急速充電:200V三相交流 100V/200Vの単相交流電圧では,EV/PHVを満充電にするために最低でも一晩程度の時間がかかるが,これでは外出先で電気の残量が少なくなったときに困る。そこで充電時間を30分程度で済ますことができるように東京電力や充電器のメーカーが共同で開発したのがEV用の急速充電技術だ。EV用急速充電では,200Vの三相三線式交流を使用することで,普通充電よりはるかに大きな電力を短時間でEVに供給することが可能となっている。 今年以降発売されるEVやPHVに搭載されるリチウムイオン2次電池の特性より,電池容量の80%までは急速充電ができるが,それ以降にはやや時間がかかるとされる。しかし,8割の電池容量があれば,実用上ほぼ問題なく運用できるだろう。このように,急速充電はEVの普及において必要不可欠な技術だが,欠点はその大電力を扱う特性上,商用施設など大電力に対応できる場合に限られること,まだ市場が小さいため充電器の価格が約350万円(+工事費)と高価であること,などだ。EV需要が盛り上がり普及の速度が上がることで,急速充電器の市場も立ち上がり,量産効果によって急速充電器の価格も現在より低下することが期待される。 (この記事の全文は,テクノアソシエーツ発行のホワイトペーパー「EV充電インフラ: 技術・市場の動向」でご覧いただけます) 参考文献: 「環境・電池の技術ロードマップと利用シーンの将来像」 〜エコカーと家・街の変貌が生み出す新たなビジネス機会〜 |
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