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「病院から地域・在宅へ」見えてきた医療ICTの成功要因
[2013/01/29]
診療所を中核にICTを活用した医療連携が動き出している。今後の市場拡大が期待される医療ICT分野を新たなビジネス機会として取り込むためには、医療現場のニーズを的確にとらえ、医療機関に提案していくことが求められる。 現場の医師の多くがICT導入のメリットとして口にするのが、(1)情報共有、(2)業務効率化、(3)医療の質の向上、の三つである。これを踏まえ、医療ICT化の10個の成功要因とICT企業の対応策について抽出してみた。 有望市場は医療連携が先行している地域 まず、先行事例に共通する成功要因の1つは、ICT導入前から地域の医療従事者同士が顔の見える関係を構築している点である。 ICT化によって医療従事者同士の情報連携が効率化すれば業務負担が減り、結果的に医療の質の向上につながる。一方、これまでの医療では、診療情報を外部と共有する場面は、患者を他院に紹介する場合などに限られていた。また、医師との間に存在する心理的バリアから情報共有に抵抗を感じる医療従事者も少なくない。医療と介護では使用する言語の違いもある。ICT導入で情報共有を促進するためには、地域の医療従事者同士が円滑にコミュニケーションできるリアルなヒューマン・ネットワークが構築されていることが、前提となる。患者情報という個人情報を扱うため、医療 従事者間の信頼関係が構築されていれば、責任やリスクの所在を明確化でき、セキュリティ・リスクの低減にもつながる。 また、ICTの導入・活用は、先行投資が必要で、入力の手間が増えるなど、慣れるまで業務負担が増す。そのため、これらの負担を上回るメリットや成功事例を提示できるかがカギを握る。ICTの導入効果が見えやすい「医療連携が盛んに実施されているが、ICT導入が遅れている地域」が、今後の医療ICTの有望市場と位置づけることができる(図1)。
何が共有できるかではなく、何を共有すべきか 電子カルテを中心とした病院情報システムのような大規模システムを初めから導入するのではなく、連携規模や現場ニーズに応じてハードウェアやサービスを選定することで、コスト負担が軽く、柔軟性・拡張性のあるシステムを構築している事例も多く見られる。 ネットワーク回線やタブレットなどの情報インフラやICTデバイスの進化に伴い、処理能力の向上や多機能化が進んでいる。数年前では難しかった大容量データの共有など、様々な処理が、場所や時間を問わず可能になってきた。一方、こうしたシステムの“肥大化”が逆にコスト増を招いているという指摘も多くされている。 今、医療現場の多くが求めているのは、「何が共有できるかではなく、何を共有すべきか」という視点に立って構築されたICTシステムである。すなわち、共有する情報コンテンツで差異化できるかがポイントになる。例えば、血圧・脈拍データはデータ量そのものは数値情報なので非常に少ないが、医師にとっては循環器疾患患者の経過観察や抗がん剤治療を実施しているがん患者の副作用管理に重要な意味を持つ。共有すべき情報コンテンツを医療現場から吸い上げて、デバイスやネットワークを連携させた仕組みとして提供していく必要がある。 医療現場のICT化の目的は、新しいシステムや機能を導入することでなく、業務を効率化し、医療の質を向上させることである。不必要な機能や連携規模に見合わない高度なシステムは、使い勝手の悪化やコスト増を招き、業務の非効率化を招きかねない(図2)。ICT企業は、必要に応じて機能を絞り込むことも選択肢にして医療のICT化を支援し、段階的に効果測定をしながら機能拡張を図っていく提案が求められる。
その他、ICTを活用した医療連携の成功要因や先行事例について、テクノアソシエーツは医療機関などへの訪問取材をもとに、調査レポート「医療のICT活用、先行事例に見る成功の秘訣」としてまとめた。ICTに期待する医療現場の生の声を拾い上げ、そこから得た共通の課題を抽出することで、医療連携でICT企業が対応すべきことを示唆するとともに、ICTを活用した医療連携の方向性を展望する。
(テクノアソシエーツ=笹木雄剛)
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