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免疫を高めて病気を予防・改善
実用化が進む免疫活性化物質「IP−PA1」

[2008/05/16]
 免疫を活性化して,病気や体調不良を改善・予防する――香川県のベンチャー企業,自然免疫応用技研が開発を進める自然由来の免疫活性物質「小麦発酵抽出物」が,こうしたコンセプトのもと,食品や飼料分野へと事業を拡大している。

 小麦発酵抽出物は小麦をベースに製造された機能性成分で,糖脂質(リポポリサッカライド)とよばれる物質を有効成分とする。糖脂質は,その名の通り糖と脂質からなる物質で,野菜や根菜類など広範な食品に含まれることが知られている。同社CEOの杣源一郎氏らの研究グループは,1991年に免疫を活性化する物質として糖脂質IP-PA1を発見,2006年に小麦発酵抽出物として製品化した。
 「我々が着目するまで,糖脂質は機能性成分としての研究はまったく研究が進んでいなかった。また,食品に含まれる糖脂質は極めて多様で,含有量も一定ではない。そのため,機能性素材として上市するには質と量を規格化し,安全性と機能性を安定的に保証する必要があった」(杣氏)と振り返る。

杣源一郎氏
自然免疫応用技研CEO
杣 源一郎氏
 これまで,免疫活性化による幅広い生理活性が示唆・実証されている。具体的には,感染症の予防,アトピー性皮膚炎やアレルギーの抑制,高脂血症改善,鎮痛作用などで,「いずれも免疫の中枢機構を活性化する(囲み参照)ことで生体の恒常性を制御し,多様な効果を発揮する」(杣氏)という。IP-PA1は,これら諸疾患・症状に関与する特定の分子を特異的に制御するのではなく,その上流にある免疫機構を調節し,下流で多様な生理機能をもたらす。
 すでに畜産・水産養殖分野で,感染症予防の飼料添加剤として実用化が進んでいる他,この4月には,食品用として野田ハニー食品工業(徳島県)が開発・販売する「すだちバーモント」に,新規配合されるなど,一般食品への採用も進み始めた。今後は,飼料,食品,化粧品を重点分野に新規の機能性を持つ素材として展開し,将来的には創薬へとつなげていく考えだ。

小麦とパントエア菌が作り出す自然素材
 IP-PA1は,Immunopotentiator of Pantoea agglomerans 1の略で,パントエア菌(Pantoea agglomerans)由来の免疫賦活物質という意味である。パントエア菌は,小麦や果物,ジャガイモ,米,シイタケなど,植物に広く共生する細菌であり,食経験から安全性が示されている。
 IP−PA1の機能性に着目した杣氏らは,その生理活性機能の解明と安定製造技術の開発に着手。2001年には,IP−PA1の研究開発および製品開発を目的に,産学官を横断する異業種・異分野連携体制「自然免疫賦活技術研究会」を立上げ,小麦を培地にしたパントエア菌の発酵培養技術を確立。IP-PA1を有効成分とする小麦発酵抽出物の大量・安定供給にメドをつけた。

神経痛,眼精疲労,倦怠感・疲労感等の症状改善
 2006年3月にはNPO法人「環瀬戸内自然免疫ネットワーク」を発足,糖脂質の健康効果や安全性に関する情報公開,および啓蒙活動に力を注いでいる。さらに同法人では,医師や薬剤師,管理栄養士等の医療従事者のネットワークを組織し,IP−PA1をはじめとする免疫活性化成分・食品等の評価・検証体制(ヒト試験体制)を構築している。
 実際,前述のすだちバーモントは,この体制のもとで118名のボランティアの協力を受け,ヒト試験が実施された。その結果,肩こり,神経痛,眼精疲労,倦怠感・疲労感,便秘,高血圧等の症状に対する改善効果が有意に確認された。
 自然免疫応用技研は,こうして蓄積されたIP-PA1や小麦発酵抽出物の知的財産や関連技術をベースに2006年7月に設立,「高度な連携体制のもと,自然免疫の活性化という機能性を軸に,事業展開していく方針を立てている」(杣氏)。具体的な事業領域としては,(1)畜産・水産飼料,(2)食品,(3)化粧品,の3つを重点分野としている。IP-PA1の機能性を考えると,当然,創薬も視野に入ってくるが,「まずは,これらの分野で事業を軌道に乗せてから,創薬へと事業を拡大する」(杣氏)方針だ。
(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)


IP−PA1の作用メカニズム―TLR4に作用して,マクロファージを活性化
 IP-PA1が活性化するのは,免疫細胞の中でも,マクロファージと呼ばれる細胞だ。マクロファージは,すべての多細胞生物に共通して存在する自然免疫系(抗原抗体反応に依存しない免疫系。抗原抗体反応を機軸とする免疫系は,獲得免疫と呼ばれる)で中心的役割を果たし,別名,貪食細胞と呼ばれる。生体内に侵入した細菌やウイルス,死んだ細胞を捕捉,分解することから,この名称が付けられた。また,獲得免疫においては,抗原を提示し,リンパ球の一種であるT細胞を活性化させる。生体内のあらゆる臓器・組織に存在し(図1),感染防御だけでなく,物質代謝,創傷治癒,代謝調節に関わっていることが分かっている。
 マクロファージの細胞表面には,さまざまなレセプター(受容体)が発現し,中でもToll様受容体(Toll like receptor; TLR)は,外来異物に対する免疫機能の発動に重要な作用を担っている。IP-PA1はTLR4に結合することでマクロファージを活性化する(図2)。近年,TLR4は腸管免疫の恒常性維持への関与が明らかになりつつあり,TLR4を標的とした医薬品の開発も進んでいる。

図1 マクロファージの組織分布と生理的役割
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図2 マクロファージ活性化メカニズム
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