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太陽電池,次のビジネスの攻めどころ


太陽電池の次のビジネス機会(2)
室内利用の新市場を開拓する色素増感型
結晶Siモジュールより安くなるのは2024年


[2010/03/31]


 太陽電池の新たな市場を開拓するのが,室内利用である。例えば,パソコンや携帯電話機などモバイル機器の補助電源などがある。そこでは変換効率や耐久性よりも,デザイン性や装飾性および価格の安さが求められる。
 こうした要求に応える新型太陽電池の有力候補として浮上しているのが色素増感型太陽電池である。構成材料である色素の種類を変えることでさまざまな色を出せるほか,基本的に印刷法で製造できることから,製造コストを大幅に下げることができるとされている。
 さらに色素増感型は,既存の結晶Si系とは異なる特徴を持つ。第1に発電にはほとんど可視光しか使わないため,太陽光より蛍光灯など室内光の方が変換効率は高くなる。第2に,色素増感型は日照量が低下したり,光の入射角が変わったりした場合に,変換効率が結晶Si系のように低下しない。
 このため,色素増感型はまずは結晶Si系と真っ向からぶつからない室内利用やモバイル機器の補助電源として市場投入し,将来的には変換効率や耐久性の弱点を克服することで,屋根置き用途の置き換えていくというシナリオになる。実際にここへ来て,色素増感型を開発するメーカーによる,室内用途を意識した発表が相次いでいる(図1,図2)。

色素増感型太陽電池を搭載した携帯機器向け補助電源の試作例(テクノアソシエーツが撮影)
 
液晶ディスプレイのカバーに色素増感型太陽電池を組み込んだノート・パソコンの試作例(日本写真印刷が提供)
図1:色素増感型太陽電池を搭載した携帯機器向け補助電源の試作例
(テクノアソシエーツが撮影)
 
図2:液晶ディスプレイのカバーに色素増感型太陽電池を組み込んだノート・パソコンの試作例
(日本写真印刷が提供)


 このような室内利用やモバイル機器の補助電源の用途では,同じ色素増感型でも「樹脂フィルム基板タイプが本命」と見る関係者が少なくない。色素増感型の試作では,ガラス基板(FTO基板)を採用した例が多いが,樹脂フィルム基板に置き換えることで軽くてガラスのように割れないものとなり,生産性の高いロール・ツー・ロール方式も可能になるからである。ただし,樹脂フィルム基板タイプに移行するには課題が多い。

 まず,これまではガラス基板上のTiO2の微結晶を約500℃で焼き固めていたが,樹脂フィルムはガラスに比べて耐熱性に劣るため,低温焼成プロセスを確立するなどプロセス上の対策が必要となる。次に,内部に水分が浸入すると性能劣化の原因となるため,ガラスと同等の水分遮蔽(バリヤー)性を持つ樹脂フィルムを採用しなければならないが,「かえってガラス基板よりコストが高くなる」(業界関係者)と言う。
 しかも「ロール・ツー・ロール方式=低コスト化」という図式も怪しくなってきた。ロール・ツー・ロール方式はほとんどの工程が印刷で一貫し,材料や製品仕様が固まっている場合に威力を発揮する。その一方で色素増感型は,色素の吸着や電解液の注入などバッチ工程が入るだけでなく,まだ開発途上で材料や製品仕様が変わる可能性が高い。

 こうした背景から,テクノアソシエーツは,ガラス基板を使ったタイプの色素増感型が今後も続くと見てそれを前提としたコスト・シミュレーションを実施した。各材料の単価,使用量を推定し,それらを積み上げることで初期コストを設定,モジュール・コスト,導入費用,発電コストのそれぞれについて,2010〜2030年の推移を見た。
すでに「太陽電池・発電業界の変革シナリオ2009」(2009年6月発行)で示した結晶Si系のコスト推移と比較したところ,モジュール・コストに関しては当初は高い色素増感型が2024年には逆転し結晶Si系を下回る(図3)。一方で導入費用,発電コストはともに2030年になっても色素増感型が結晶Si系を下回ることはない。これらの結果から,色素増感型が市場で受け入れられるためには,今回の想定を大幅に上回る低コスト化策を導入するか,結晶Si系とは勝負せずに色素増感型の特徴を最大限発揮できる応用に特化するしかない。


「スマートエネルギーネットワーク」の概念(NTTファシリティーズが提供)
図3:色素増感型と結晶Si系のモジュール・コストを比較(テクノアソシエーツが作成)


 テクノアソシエーツは,有機系太陽電池の中でも特に注目を集めている色素増感型のコスト・シミュレーションを実施し、その内容を調査分析レポート「太陽電池,次のビジネスの攻めどころ−EV連係,セルフ電源,非住宅用−」(2010年3月発行)で報告している。材料など各構成コストを積み上げることで初期コストを導き,ある条件でコストが下がっていくと仮定し2010〜2030年のコスト推移を算出している。本レポートには,表計算が組み込まれたデータファイルも同梱しているため,各パラメータの数値を変えることで独自のシミュレーションの実施も可能となっている。

(朝倉博史=テクノアソシエーツ)


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