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パネル・メーカーの事業戦略研究2008

FPDテレビ市場の成長継続を担う新興地域
中国・アジアではなく東欧・CISが有望

[2008/02/08]

  FPDテレビ市場が世界的に急拡大している。2006年に拡大傾向が顕著となったFPDテレビ市場は2007年も急拡大が続いており,各調査機関の需要予測によればFPDテレビ(LCDテレビとプラズマ・テレビの合計)の年間出荷台数は2008年にも1億台を突破し,CRTテレビの出荷台数を逆転する見通しである。普及率も日本,北米(米国),西欧を中心に,急速に伸長している。FPDテレビの年度別出荷台数および調査機関のFPDテレビ需要予測を基に100世帯当たりの保有台数を推計すると,2009〜2010年に100台,すなわち「1世帯に1台」を超える見通しである(図1)。FPDテレビの継続的な市場拡大に向けて,各テレビ・メーカーは,「薄型化」や「低消費電力化」といった新たな価値提案を競っているが,日本,北米,西欧など既存の主要市場地域に代わる新たな主要市場地域の開拓が重要になってきた。そこで新たに新興市場になる可能性がある地域の潜在性を評価した。この結果から意外なことが見えてきた。

新興市場になる可能性がある地域の潜在性をシミュレーションで評価
 新たな主要市場になる可能性がある中国,東欧,独立国家共同体(CIS),中南米,アフリカ,中東,オセアニア,アジアの各地域(新興市場地域)について,FPDテレビ市場としての潜在性を評価した。潜在性は,「人口1人当たりGDP」,「世帯人員数」,「所得階層構造」の三つの視点を切り口として,FPDテレビの100世帯当たりの保有台数やその地域の類型需要をシミュレーションによって評価した。
 この結果,東欧・CIS地域の保有台数が2011年までに大きく伸び,累計需要も今回評価した地域の中で最大になることが分かった(図1)。また中東地域も保有台数の大きな伸びが期待できるという結果が出た。一方,東欧・CISと同様にBRICsを抱えるアジアと中南米については期待されているほどには市場としての潜在性が大きくないことが,シミュレーションの結果から見えてきた。保有台数が今後大幅に伸びることが期待しにくいからである。このほかでは,アフリカは保有台数の伸びが期待しにくいこと,オセアニアも世帯数が少ないことから,いずれも市場の潜在性が乏しい結果になった。

FPDテレビの新たな市場地域として注目される東欧・CIS,中南米,中東
 東欧・CISでのFPDテレビの100世帯当たりの保有台数は,2011年に66台に達し,累計需要は8500万台に達する。このうちCISを除く東欧については,ブルガリア,旧ユーゴスラビアの一部の国々を除いて,保有台数がおよそ80〜90台に達する。東欧地域全体でも保有台数は80台弱に達する。東欧は,今後数年間,全世界で最も成長率が高い地域の一つである。各テレビ・メーカーが西欧に注力しているため,東欧にまで手が回り切らないのも実情だろう。欧州での需要が一巡する2010年以降,東欧地域でFPDテレビの普及が爆発的に拡大する可能性がある。
 CIS地域については,保有台数が地域全体で60台に達する。特にロシア,アゼルバイジャン,カザフスタン,トルクメニスタンといったカスピ海沿岸の産油国は,保有台数が80〜90台に達する。これらの国では,名目成長率の著しい伸長が続いているが,昨今の資源バブルともいえる資源価格高傾向によってインフレ率も高い。このような現象が沈静化しインフレ率がゼロとなると仮定しても,これらの国では,40〜80台の普及を見込むことができる。
 また中東については,保有台数が2011年に46台に達し,累計需要は1300万台程度まで伸びる。同地域に属する国のうち,イスラエル,サウジアラビア,アラブ首長国連邦,クウェートについては,保有台数がほぼ100台に達する。

保有台数が伸びないアジア,中南米,アフリカ
 アジアについては,今回のシミュレーションでは保有台数が2011年でも7台にしかならなかった。ただし累計需要は,アジア全体の世帯数は全市場地域で最大であるために3300万台まで達した。このうち中国の保有台数は2011年に20台,累計需要は6800万台になる。中国には,所得格差の広がりの指摘や成長率鈍化の傾向がある。これらがFPDテレビの普及に対するマイナス要因になっている。この結果を見ると,中国全体の市場の潜在性は期待しているほどには大きくない。ただし,中国は世帯数が大きいため,わずかな普及予測のズレが需要予測の大きなズレとして現れる点に留意すべきである。中国は,シャープをはじめとする日本のテレビ・メーカーを中心に重点市場地域と位置付けられている市場地域だが,今回の結果を見ると過度に重点を置くことは危険を伴うといえる。中国同様にBRICsの一角を占めるインドについても,保有台数が10台未満に留まる。なおアジアの中では,韓国,台湾,シンガポールの保有台数が80〜100台に達する。
 中南米ついては,保有台数が2011年に36台に達し,累計需要は4500万台となる。消費市場としての潜在性を高く評価されているBRICsの一角を占めるブラジルでの保有台数は40台になる。ブラジルの1世帯当たりのGDPは,東欧諸国の世帯当たりGDPと大差がないにもかかわらず,FPDテレビの保有台数は半分程度に留まる。この理由は,ブラジルと東欧諸国では所得階層構造が著しく異なることに起因する。所得最上層10%の所得と所得最下層10%の所得の比は,東欧諸国ではおよそ10倍以内に留まるのに対し,ブラジルでは67倍と大きい。この所得格差がブラジルにおけるFPDテレビの普及の妨げとなる恐れがあることをシミュレーション結果は示唆している。中南米全体で見ても,地域全体の世帯当たりGDPは1万5000米ドルを上回るものの,所得格差が激しい。このため,FPDテレビの普及の速度は遅いと見られる。その分,CRTテレビの残存市場の規模が大きい可能性がある。
 アフリカについては,保有台数が5台,累計需要は800万台にしかならない。特に南部,北部を除いては,2011年時点でFPDテレビの市場は未だ立ち上がってこない。
 オセアニア(オーストラリア,ニュージーランド,パプアニューギニア)については,保有台数が2011年に84台になり,累計需要が850万台になる。このうちオーストラリアとニュージーランドは,保有台数がほぼ100台となる。一方パプアニューギニアは,10台未満に留まる。今回,シミュレーションの対象国としていない周辺の島嶼国についても,パプアニューギニアと同様の傾向にあると見ることができる。

 「LCDパネル・メーカーの事業戦略研究2008」では,FPDテレビの最新状況と将来動向を中心に,主要LCDパネル・メーカー5社の事業戦略を事業ミッション,市場認識,技術戦略,製造戦略,製品戦略,販売戦略,事業体制,財務戦略の8項目に分けて多角的に分析した。FPDテレビ業界に関連するパネル・メーカー,部材メーカー,装置メーカーなどに対する指針を示す情報を提供する。なお,本書で示したシミュレーションでは,シミュレーションによって得られる「結果」より,結果を導き出すための「過程」を重視している。シミュレーションの基になるデータに比較的入手容易な情報を使い,シミュレーションの過程を詳細に記述することにより,可能な限りシミュレーションの再現性を確保するように試みた。

図1:2011年国別FPDテレビ潜在保有台数(%)
図1:2011年国別FPDテレビ潜在保有台数(%)

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