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自動車メーカーの電動車戦略・将来展望 2012-2013

リチウム電池、充電・劣化状態推定の高精度化が重要に
[2012/10/17]


 今年から来年にかけ、日米欧の完成車メーカーからEV、PHEV、HEVなどの電動車が続々製品化される。これらの電動車には高容量・高出力のリチウムイオン電池が搭載される。これまでにもリチウムイオン電池は、日産自動車のEV「リーフ」や米General Motors社のレンジエクステンダ「Volt」、トヨタ自動車のPHEV「プリウス」に搭載されてきた。今後、多くの完成車メーカーで本格的に電動車へのリチウムイオン電池搭載が進むことになる。

 リチウムイオン電池の本格的な普及で顕在化する課題の一つが電池の劣化である。電池は使うことで経時的に変化し、劣化していく。すなわち寿命がある。劣化の早さは使用環境や充放電の仕方によって大きく異なる。プリウスHEVで実績のあるニッケル水素電池も劣化するが、電池の充放電状態を表すSOC(State of Charge)が満充電状態の20%〜30%程度しか使用されない。このため電池への負荷が軽く、劣化そのものが大きな注目を集めることは少なかった。ところが、EVやPHEVになると状況は異なる。EVやPHEV ではSOC80%程度の充放電が行なわれる。HEVと比較して電池にとって大きな負荷となり、劣化が進む。そこでEV、PHEVに搭載されるリチウムイオン電池では、これまで以上に高精度な充電状態や劣化状態の監視が不可欠となる。

 今回、テクノアソシエーツは、こうした課題に対して完成車メーカーがどのような取り組みを行なっているか調査し、レポート「自動車メーカーの電動車戦略・将来展望2012-2013」の中でその内容についてまとめた。調査対象メーカーは電動車で先行するトヨタ自動車である。SOCとSOH(State of Health)の推定方法に関して、2008年〜2011年に公開された同社の特許を分析した。

SOC、電流算出法では誤差拡大を防ぐ補正がキー
 電池を搭載する電動車にとって、SOCの推定は電池の過充電や過放電を制御し、劣化状態を検知するために不可欠なものである。トヨタ自動車の特許を分析すると、SOCの推定方法は大きく二つに分かれる。@電流積算法 と A電池モデル式を使う方法である。電流積算法はSOCを推定する一般的な方法である。外部充電直後のSOCを初期値とし、電動車の走行時には充放電電流を積算してSOCを推定する。この方法では次に外部充電するまでに、長時間にわたって充放電電流を積算し続けなければならない。このため徐々に誤差が拡大し、推定されたSOCと電池の実際のSOCが乖離する。場合によっては電池に過充電状態や過放電状態が引き起こされる。誤差を少なく抑えるためにはなんらかの補正が必要となる。
 電流積算法の特許を分析すると、以下の式が使用されている(図1)

  現状SOC = 初期SOC + 電流積算値 + 補正

図1●トヨタ自動車の特許にみる高精度なSOCの推定方法
図1●トヨタ自動車の特許にみる高精度なSOCの推定方法

 ここで、初期SOCは電池の開放電圧(OCV)とSOCとの相関から求められる。SOCの精度を高めるため、初期SOCの計測にはOCVの変化が大きい領域を使用する。ちなみに、電動車走行時の電池動作に使うのは主にOCVの変化が小さいフラットな領域である。補正量の算出では、蓄積電荷量Qと電池電圧Vをパラメータとして、電池電圧変化量dV/dQと蓄積電荷量Qの相関を初期状態と比較し、その変化量から補正量を算出する。

 電池モデル式では、電荷を運ぶリチウムイオンのイオン濃度を拡散方程式から求め、満充電状態のSOCと相関させる方法などが開示されている。

SOH、多様な手法を検討
 一般的に車載用リチウムイオン電池では、充電時のSOCが初期状態の70%〜80%程度に低下した場合に寿命と判定される。SOHは初期状態のSOCと使用後のSOCの変化量から求められる。推定されたSOHは、電池交換時期の判定や運転モード制御による電池の長寿命化に使われる。トヨタ自動車の特許を分析すると、SOHの推定方法は大きく三つに分かれる。@満充電容量の低下と相関する内部抵抗の増加を計測する方法、A走行時間や走行距離、充電効率などの劣化指標を用いる方法、B満充電容量の低下を計測する方法である。

 例えば、内部抵抗の増加を計測する方法では、複数のSOC(50%、70%、90%)で充電電流(0.5C、1.0C、2.0C)を変化させて電池の内部抵抗を求める方法が開示されている。この方法では、外部充電開始から30秒後に充電を停止し、停止直後、0.5秒後、120秒後に電池電圧を計測する。その結果から電池の内部抵抗を算出し、初期状態との変化率から劣化状態を推定する。

 劣化指標を用いる方法では、予め計測された電池劣化と劣化指標の相関データを基に推定する方法が開示されている。劣化指標には充電効率、満充電時の温度上昇率、充電時間などが使われている。満充電容量の低下を計測する方法では、電池モデル式からSOHを推定する方法が開示されている。

 車載用リチウムイオン電池の本格的な普及で課題となる電池の劣化に関する議論も含め、EV/PHV普及に向けては、自動車各社の事業戦略、充電インフラ整備状況など様々な議論がある。テクノアソシエーツでは、こうした視点で、調査レポート「自動車メーカーの電動車戦略・将来展望 2012-2013」としてまとめ、電動化によって大きく変わる自動車産業を分析・展望している。

(テクノアソシエーツ=宮崎信行)



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