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テレビ・携帯電話編

デジタル家電,中国での事業機会は研究開発拠点の構築が急務
[2006/07/26]

 中国事業を展開する日本のデジタル家電関連メーカーの間で,中国国内での研究開発活動を強化する動きが活発になっている。中国のデジタル家電市場は,競争が激しく,携帯電話を例にとると,国産だけで実に60社以上の端末メーカーが存在し,1つの企業が1度に10種以上の機種を発売するような市場である一方,人件費と購買力が急上昇し,今や世界でも有数の消費市場となった。これに対して,日本メーカーは本格進出やシェア拡大を目指すために,「研究開発拠点としての中国」という発想が最も重要になってくるだろう。市場に近い場所で研究開発活動を行ない,より中国人の嗜好にあった製品を開発する。そのために,中国政府も巻き込み,現地企業などとの関係構築が必須である。中国政府や現地企業も,海外企業と連携しながら技術力を高め,将来的には独自で実施できる能力を会得する方針を明確に打ち出している。

海外企業による中国でのR&Dセンター設立がブーム
 海外企業による中国でのR&Dセンターの設立がブームとなっている。1999年に,法律で海外企業の独資によるR&Dセンター設立が許可されて以来,海外企業によるR&Dセンターの設立ブームが現在まで続いている。一過性のものではなく,消費地域に根ざして中国市場を開拓していくという戦略に基づいたものである。日本のデジタル家電関連メーカーにとって,国内はすでに量的に飽和してしまった市場であり,国内だけではこれ以上継続的に利益を上げることが難しくなっている。そこで日本のメーカーは,FPDテレビに代表される耐久消費財などの普及率が急上昇している中国へ,こぞって製品を投入した。
 しかし,日本市場向けの製品を現地の状況や消費者の嗜好へ合わせないまま,中国市場に投入した結果,中国消費者の心を掴むことに苦労している。日本製品は,中国製品と比較して性能は優れているが,中国の一般消費者が購入するには価格が高すぎる。さらに,テレビと携帯電話を例に取ると,基地局や放送設備など,機器を利用するためのインフラが日本ほど整備されていない問題もある。日本のメーカーは,現地でのR&Dセンター設置を通じて中国人の嗜好に対応した製品・サービスを提供するためのインフラを再構築し,製品のカスタマイズや新たに技術を開発する必要があった。

中国政府も巻き込んだ,現地企業との関係構築が急務
 欧米メーカーが現地にR&Dセンターを相次いで設置した目的と意義は主に3つある。
 1つは,中国市場に合わせた研究を効率的に行ない,確実に研究成果を生み出すことである。例えば,清華大学に代表される現地の一流大学と産学連携で共同研究を推進することによって,重要なミッションでありながら人的,資金的リソースが限られている上,成果に対する不確実性,時間的リスクをはらむ企業のR&D活動の負担を軽減することができる。R&D段階で,市場からの要求や情報を吸い上げることもできる。
 次に,学生のリクルーティング,現地の優秀な学生の青田買いである。寄付講座や共同研究を通じて大学側に自社技術の一端を開放し,学生のうちから自社の企業文化に触れさせる。実際に,米Texas Instruments Inc.は,いくつかの大学に自社の技術を無料で開放し,研究や授業に供している。
 そして,中国政府との関係強化である。中国にR&Dセンターを設立した欧米メーカーは,「中国市場での成功は,資本主義が浸透した現在でも市場のコントロール力を握っている中国政府と良い関係を構築・維持することが第1歩である」との共通認識を持っている。
 このような動きには欧米メーカーのほうが日本メーカーより早く対応した。日本メーカーも欧米メーカーの動きに追随しているが,後手に回ったことは,中国政府も絡めた現地企業と関係構築に想像以上のマイナスの影響を与えている。すでに,中国政府,現地企業と欧米メーカーとの間で関係ができ上がっている場合が多く,日本メーカーは,R&D人材の確保や中国政府とのパイプ作りに苦労しているのが現状である。

中国でのR&D強化で先手を打つ海外企業
 携帯電話端末で世界最大手のフィンランドNokia Corporationは,中国で6カ所にR&Dセンターを設置し,600人以上の研究開発スタッフを擁している。中国において2006年6月の時点でまだ許認可がおりていない第3世代の移動通信に関する技術と,ソフトウエアの標準化に重点を置いて中国国内の自社R&Dセンターで研究を行っている。また,携帯電話にグローバルIPアドレスを割り振ることができるようになる「モバイルIPv6技術」に関する研究など,将来を見据え,第4世代の移動通信技術の研究も並行して行っている。Nokiaの2005年の中国での売上高は34億ユーロに達しており,中国はNokiaにとって世界第1位の市場になっている。Nokiaの中国でのR&Dの現状を見ると,いかに中国市場を重視し,成果に結びついているかが分かる。
 世界的に見ると日本企業は他の海外企業と比較してR&D投資比率が低い傾向が見られる。携帯電話について日本メーカーの地域別の売り上げを見ると,特に中国市場では苦戦しており,さらに売り上げが振るわなければ,当然R&Dへの投資も減らさざるを得ず,このような悪循環に陥った結果,携帯電話端末メーカーの中には中国市場から撤退を余儀なくされた企業も多い(図1)。

図1


日本勢では,NECが現地R&Dを強化
 中国のデジタル家電市場では,激しい淘汰合戦が繰り広げられている。中国市場攻略には,日本メーカーも欧米メーカーに引けを取らないような,現地でのR&D戦略強化が必要である。知財面での戦略では,現地の共同研究先企業への自社技術開示幅の拡大があるだろう。そのほかに,中国独自の技術標準研究への参画,現地R&Dセンターの運営を中国人責任者に委譲することなども考えられる。
 東芝,三菱電機をはじめ,中国の携帯電話市場から撤退する日本メーカーが相次ぐ中,NECでは,携帯電話事業の責任者に有能な中国人を登用するなど,中国におけるR&Dの現地化を着々と進めている。中国における現地人採用のメリットは,日本が苦手とする中国政府への働きかけといった現地でのロビー活動も任せることができる点だ。また,NECは技術面でも,第3世代ネットワーク構築の際,現行の第3世代よりも高速な次世代通信規格「HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)」の設備を提供する一方,中国が自国の第3世代標準として強力に推している「TD-SCDMA(Time Division-Synchronous Code Division Multiple Access)」方式のR&Dを行ない,中国第3世代の早期実現に貢献するような柔軟性もみせている。
(テクノアソシエーツ 品田茂)


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