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3次元LSIの先進企業株式会社ザイキューブ,
東北大学小柳光正教授を取締役CTOに迎え,世界に先駆け,
同氏が開発した画期的な積層型3次元LSIを
実用・量産化へ向けてスタート

[2004/11/17]

 東北大学と3次元LSIの先進企業株式会社ザイキューブは11月15日,東北大学教授の小柳光正氏がザイキューブの取締役CTOに就任し,世界に先駆け,同氏が開発した画期的な積層型3次元LSIの実用・量産化に向けてザイキューブがスタートしたと発表した(図1)。

図1:3次元LSIの実用・量産化の記者会見
図1:3次元LSIの実用・量産化の記者会見
 左から東北大学教授ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー長 湯上浩雄氏,東北大学教授工学研究科長・工学部長 井口泰孝氏,東北大学教授兼(株)ザイキューブ取締役CTO 小柳光正氏,(株)ザイキューブ代表取締役社長 盆子原學氏,(株)ザイキューブ常務取締役 上林和利氏。

 3次元LSIは,複数のチップやウエーハを積層し一つのLSIとして機能させたデバイスである。東北大学とザイキューブが目指す究極の3次元LSIは,センサー・チップやアナログIC,論理LSI,CPU,メモリーなどを積層したチップ(図2)。小柳教授は,すでに光センサーとなるフォトダイオードとその信号を処理するCMOS回路を積層した3層構造の視覚情報処理プロセサ(人工網膜チップ)の試作に成功している(図3)。こうした3次元LSIは,ユビキタス情報端末などのイメージ・センサーや,ロボットの画像認識,高知能センサーなど,次世代機器向けの幅広い用途が期待できる。

図2:東北大学・ザイキューブが目指す究極の3次元LSI
図2:東北大学・ザイキューブが目指す究極の3次元LSI

図3:試作した3層の人工網膜チップ
図3:試作した3層の人工網膜チップ

最先端SoCが抱える技術的課題などを打ち破る
 小柳氏は,「3次元LSIが,高性能化,低消費電力化,低価格化,高機能化などの点で,これまでのSoC(system on a chip)の限界を打ち破る」という。現在の最先端SoCが抱える技術的課題は,微細化による高集積化,大チップ化に伴い,LSI内部の機能ブロック間をつなぐ配線,いわゆるグローバル配線が長くなったことなどに起因している。信号配線が長くなった結果,配線の抵抗や容量が増加し,高性能化や低消費電力化の阻害要因となっている。また,配線間隔が狭くなり,配線間の信号干渉も発生している。
 3次元LSIでは,小面積のチップを重ね合わせ,各層間に貫通配線を形成することによって長距離配線が不要になり,従来の半導体と比べてケタ違いの高性能化や低消費電力化を実現できるとしている。信号干渉などの問題も発生し難い。しかも3次元LSIは,人工網膜チップのような超並列動作によって高い演算性能を実現でき,脳の並列処理に近いアーキテクチャを持つLSIの開発が可能になる。
 また最先端SoCは,億円単位の開発費がかかることも大きな課題である。3次元LSIは,センサーやアナログ,メモリー,CPUなど,異なった機能,異なった世代のLSIを積層して一つのチップを実現することが可能で,しかも,積層するチップの面積を小さくでき,使用するチップの歩留まりも上がり,低価格化を実現できるという。
 これまでにもLSIを積層化する技術は開発されている。例えば,最近注目を集めているSiP(system in package)はその一つ。SiPは,通常のLSIを重ね合わせ,一つのパッケージに実装したデバイスである。ワイヤ・ボンディングを介して各LSI間を接続する。LSI間の接続にワイヤ・ボンディングを使用するため,高速化するのが難しく,しかもLSI間をつなぐ配線の本数も限られる。薄型化が難しいといった課題も抱えている。

8インチの試作ラインを立ち上げ,2009年に500億円の売り上げ目指す
 ザイキューブが導入する小柳氏の技術は,積層するチップやウエーハに貫通配線用のホールとなるトレンチ溝を形成し,トレンチ溝に配線材を埋め込む。その後,チップやウエーハを薄く研磨し,トレンチ溝の配線部分に層間の回路をつなぐマイクロバンプ電極を形成する。そこに次の層となるチップやウエーハを張り合わせ,積層する(図4)。同氏は最大10層の3次元デバイスを試作している(図5)。層の厚さは数十nm〜数百μm,トレンチ溝の直径は0.5μm〜数μmで制御可能。トレンチ溝に埋め込む配線材にはタングステンやポリシリコンを使用する。小柳氏は,こうした技術を1980年代後半から研究してきており,3次元LSIの動作を確認し,研究・開発フェーズを終え,今回,ザイキューブで実用・量産化することになる。

図4:3次元LSIの構造
図4:3次元LSIの構造

図5:10層を積層したデバイスの断面写真
図5:10層を積層したデバイスの断面写真

 ザイキューブは,超先端電子技術研究組合(ASET)で3次元LSIを研究開発してきた盆子原學氏が社長を務めており,世界に先駆け,小柳氏が開発した3次元LSIを実用・量産化する計画である。そのために30億円を投資し,2005年後半には同社の仙台開発センターに8インチの試作ラインを立ち上げる。2007年には2層の積層型3次元LSIを,2008年には3層の積層型3次元LSIを量産化する予定だ(図6)。

図6:ザイキューブの3次元LSIの立ち上げ計画
図6:ザイキューブの3次元LSIの立ち上げ計画

 ザイキューブは,セミファブレスと呼ぶ新ビジネス・モデルを展開する。このビジネス・モデルは,ユーザーからチップやウエーハの供給を受け,500工程に及ぶ半導体製造工程の中から,付加価値の高い3次元積層化に必要な30工程のみを処理する。したがって,試作ラインへの投資は少額で済み,短期間で積層型3次元LSIの事業化が可能になると盆子原氏は言う。また,3次元化に必要な設計の受託,3次元LSI技術のライセンス供与も行う。売り上げは,2007年に50億円,2008年に250億円,2009年に500億円を見込む。

東北大学も全面支援
 産学連携を手掛けてきた東北大学教授で工学研究科長・工学部長の井口泰孝氏は,「小柳教授は以前から3次元LSIの商品化を目指して研究・開発に取り組んでおり,東北大学としても全面的に支援する」と言う。また,ザイキューブと小柳氏の共同研究に施設を提供してきた東北大学教授ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー長の湯上浩雄氏は今回の発表を,ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーの成果の一つであると位置付ける。ベンチャー・ラボラトリーは,1995年に設立された。目的は,ベンチャー・ビジネスの基礎となるクリエーティブな研究,ベンチャー精神を持った研究者の育成,東北大学の大学院生の教育にある。1995年150人程度の利用者が,現在430人に増加している。このうちの3〜4割は民間企業の技術者である。
(宮崎信行=テクノアソシエーツ)






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