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産総研にみるハイテク・ベンチャー企業創出の実践と課題(6)
ベンチャー企業は成功神話の主人公ではない,
産業構造を変える国の政策の担い手だ

産総研発のベンチャー企業創出について理事長の吉川弘之氏に聞く(上)


[2007/02/06]

 産業技術総合研究所は,4年ほど前にベンチャー企業創出の仕組みを作り,すでに78社のベンチャー企業を生み出している。同研究所の理事長で,ベンチャー開発戦略センターのセンター長として自らベンチャー企業創出の指揮を執る吉川弘之氏に,産総研がベンチャー企業を創出する意義について聞いた。同氏は,変革が求められる日本において「ベンチャー企業を変革,イノベーションの担い手と位置づけ,日本の産業構造を変える。それは産総研そのもののミッションでもある」,と強調する。
(聞き手 宮崎信行 小泉孝朗=テクノアソシエーツ)


 産業技術総合研究所がベンチャー企業を創出する目的は二つある。一つはベンチャーを起業することによって,ベンチャーの育たない日本の環境のどこに問題があるかを明らかにすること,もう一つが産総研の研究者の意識改革であり,自らの研究成果を産業界に役立てようとする意欲を持ってもらうことである。
 私は,新しい科学技術は日本の産業構造を変えるポテンシャルを持っていると考える。ただし,過去の例を見ても明らかなように,大企業が自らの変革,イノベーションによって産業構造を変えていくのは難しい。その変革,イノベーションの担い手はベンチャー企業である。産総研が研究成果をベンチャー企業という形で産業界に送り出すことによって,日本の産業構造を変えていきたい。それは産総研そのもののミッションでもある。産総研の理事長である私がベンチャー開発戦略研究センターという一部門のセンター長を兼任するのは,そうした理由からである。

成功を持続させるメカニズムの一つがベンチャーの起業である
インタビュー写真
産業技術総合研究所 理事長
吉川弘之氏
 ベンチャー企業は,自らがその事業計画をベンチャー・キピタルに説明し,資金を得て,それを元に製品を開発・提供し,成功を収める。その結果として,大企業になっていく。これがいわゆる米国型ベンチャー企業の成功神話である。これは,起業家の周囲にベンチャーが育って欲しいという人がいて,それを支援する環境があって初めて成り立つ。
 ところが,日本の状況はまったく違う。戦後,努力してようやく世界に冠たる産業を作り出し,世界でトップを争えるところまでたどり着いた。その産業を壊してまで,新しい産業を作ろうなどというコンセンサスは,日本では形成され難い。このため産業は固定化し,新しい技術の受け入れ,新産業への転換が難しくなっている。その結果,日本の産業は失われた10年という言葉に象徴される停滞を生み出した。これがまさにシュンペータが言う固着した状況で,日本は非常に危機的な状況にあると考えられる。
 欧米の企業は,固着した構造は壊れるということを実感していて,新しい産業の芽を待ち望んでいるように思える。特に米国では,ベンチャー企業が生まれたり潰れたりして,産業構造がダイナミックに変化している。
 日本も成功を持続させるためには,産業が自ら良い方向に構造変化するメカニズムを内在させる必要があった。そのメカニズムの一つがベンチャーの起業であると,私は考える。しかし残念なことに,日本ではそうしたベンチャーの起業を支援する仕組みが弱かった。ベンチャーを育成しようという雰囲気もなかった。起業家は,こうした環境を壊しながらベンチャーを起業していかなければならない。それには相当なエネルギーが必要だ。米国でベンチャーを起業するのに比べれば,日本では2倍のエネルギーが必要になる。
 こうした難しい環境だからこそ,日本では政府が国費を投じてベンチャーの起業を支援しなければならない。われわれは,産業構造を変えるという国の政策を担うものとしてベンチャーを位置づける必要がある。日本では,ベンチャー企業は成功神話の主人公ではない。産業構造を変えるという国の政策の担い手である。
 独立行政法人である産総研がベンチャーの起業を支援する仕組みを構築したのは,このような理由からである。

ベンチャーの起業を日本に定着させるには,自力での運営が不可欠
 これまで産総研は,文部科学省の「戦略的研究拠点育成事業」としてベンチャー企業創出支援の仕組みを運営してきた。2007年度,産総研は自ら実施する事業として同支援の仕組みを継続させる。
 その意味では,来年度が新たなスタートの年になる。そのスタート・ラインに立てる自信を持てたのは,「戦略的研究拠点育成事業」のプロジェクトがあったからである。ベンチャー企業を創出し,そのベンチャー企業の成功によって産総研の研究成果が社会に還元され,産総研のミッションである持続的発展社会の実現のための産業構造の重心移動の担い手になり得るかどうか,今後,検証することになる。

産総研にみるハイテク・ベンチャー企業創出の実践と課題
  【第1回】 日本最大級の研究機関「産業技術総合研究所の地殻変動」 [2007年01月09日]
  【第2回】 産総研の「研究開発型ベンチャー企業創出プラットフォーム」の全容が明らかに [2007年01月15日]
  【第3回】 研究機関発ベンチャー起業準備の要諦 [2007年01月22日]
  【第4回】 計測技術のアイカンタム 産総研の計量標準技術の製品化を先導 [2007年01月25日]
  【第5回】 ベンチャー起業前の2年間で事業モデルを徹底的に検討 [2007年01月30日]
  【第6回】 ベンチャー企業は成功神話の主人公ではない,産業構造を変える国の政策の担い手だ [2007年02月06日]
  【第7回】 組織があり,人がいるのではなく,人がいて組織ができるのだ [2007年02月09日]
  【最終回】 ベンチャー企業創出に関する「知」を集積 [2007年02月19日]

記事要点掲載先:日経BP.jpTech-On!/Silicon Online

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