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日経ヘルスラボレポート

4つのアンチエイジング・トレンドが明らかに
第四回 腸から考えるアンチエイジング

[2009/08/26]


 従来の整腸機能ではなく,免疫器官としての機能がクローズアップされ,“アンチエイジング器官”としての腸の役割に注目が集まっている。腸管免疫が感染症防御の中心をなすだけでなく,免疫寛容や食品アレルギーの改善にも重要な役割を果たしていることが近年分かってきたからだ。腸年齢の若さに比例して,肌や脳も若い傾向があるという調査結果もあり,腸の健康がアンチエイジングに大きく影響することが分かってきた。
 京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学教室の吉川敏一教授は,「腸内には様々な腸内細菌が共生し,発酵によって多様な代謝物を作り出している。その中には,体にいいものも悪いものもあるが,それらがシグナルとなって全身の健康に影響していることが最近分かってきた。特に注目しているのは,免疫機構に与える影響で,ルイ・パストゥール医学研究センター(京都市/吉川教授が所長を兼任)と共同で,腸内細菌の抗ウイルス作用の検証等も進めている」と話す。

腸のアンチエイジングに「酪酸」と「ポリアミン」

 また腸のアンチエイジングに必要な成分として注目されているのが,短鎖脂肪酸の一種である「酪酸」と抗炎症物質である「ポリアミン」だ。酪酸は,難消化性でんぷんなどを原料に腸内の善玉菌が作り出す成分で,その働きは「腸の細胞のエネルギー源となり腸が元気になること」(大妻女子大学家政学部青江誠一郎教授)。腸内の細胞や粘膜を再生(ターンオーバー)・修復したり,ぜん動運動をサポートしたり,また炎症を抑えたりして,大腸の健康を支えている。
 腸内細菌が酪酸を作り出す比率が高い食材は,難消化性でんぷんのほか,でんぷん,オート麦などが知られている(図1)。また,難消化性でんぷんが多い食材は,冷えたごはんやバナナ,ジャガイモ,豆類。これらの食材を使ったおむすびやポテトサラダなどは,腸のアンチエイジングという新たな健康効果が期待でき,従来の食品ビジネスとは異なる付加価値の高い市場が開ける可能性がある。


図1 腸内で酪酸を生み出す代表的な食材
図1 腸内で酪酸を生み出す代表的な食材



 ポリアミンは,すべての生物の細胞内で合成される物質で,細胞の増殖や分化に関わっている。ヒトの代表的なポリアミンは,スペルミン,スペルミジン,プトレシンと呼ばれ,分子量が200程度までの物質である。納豆やチーズなどの発酵食品や大豆,シイタケ等に豊富に含まれ,食物から摂取したポリアミンは,消化管内でそのままの形でほぼ吸収され,体内の臓器や組織に移行する。また,腸内細菌によって産生されることも知られている。
 腸内のポリアミンが増えれば,腸内の細胞が再生・増殖し,バリア機能が高まるため,その補給は腸のアンチエイジングにつながる。中でも,ポリアミンの一種であるスペルミンは抗炎症作用が強く,高いアンチエイジング効果が期待できる。

 このようにアンチエイジング器官として腸を捉えなおすと,整腸市場とは異なる市場展望が開けてくる。2009年5月の日本栄養・食糧学会大会では5種類の乳酸菌にコラーゲンの吸収やヒアルロン酸の合成を高める作用があるという研究が報告された。また腸が,様々な消化管ホルモン(インクレチン)を分泌し,インスリン抵抗性をコントロールすることも最近注目を集めており,肌や寿命だけでなく,糖尿病やメタボリック・シンドロームとの関連も指摘されている。腸の健康や機能強化が,今後のアンチエイジング市場の主要テーマの1つとなりそうだ。

 今回,これら調査分析について,日経ヘルスラボレポート「アンチエイジング・機能性化粧品の市場・技術動向2009」(発行:テクノアソシエーツ)の中でまとめた。本レポートでは,アンチエイジング研究をリードする有識者や研究者,企業への取材や消費者へのアンケート調査を基にアンチエイジングの市場動向や研究開発動向をレポートしている。加えて,知財調査・コンサルティング会社であるSBIインテクストラの調査協力により,市場のメインプレーヤーである化粧品メーカー,原料メーカーなどの特許出願状況を分析。各社の技術競争力と地域戦略の側面から,アンチエイジング市場の行方を見通す。



(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)



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