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日欧2大化粧品メーカーが注力する “アンチエイジング成分”とは?
[2009/08/04]
美白や抗シワなどアンチエイジング機能を中心とする機能性化粧品が,化粧品市場の牽引役となる中,日欧の2大化粧品メーカーである資生堂とロレアルグループの戦略成分を比較すると,一口にアンチエイジングといっても,そのアプローチには顕著な違いがあることが分かる。日経ヘルスの藤井省吾編集長は,「欧米ではアンチエイジング対策というとシワ・たるみ対策のニーズが高いのに対し,日本ではまず美白が先に来る」(図1)と消費者ニーズの違いを指摘するが,資生堂は美白成分を進化させ,日本人女性の美白ニーズに対応してきたのに対し,ロレアルはシワ,たるみなど肌トラブル全般に対する総合的なケアを重視する戦略を採っている。
第三世代の美白成分「4MSK」で攻勢をかける資生堂 1982年に美白成分「アルブチン」の開発をスタートさせた資生堂は,8年の歳月をかけ同成分を有効成分とした薬用化粧品を開発。2003年に主要特許が切れるまで,同社の美白化粧品をリードする主要成分として進化を遂げてきた。 アルブチンの後を受ける形で登場したのが「m-トラネキサム酸」(mはメラニン生成抑制効果を表す)だ。シミ部位に特徴的に起きている慢性微弱炎症に作用し,メラノサイトの活性化を抑制し,美白効果を発揮する成分で,2002年に厚生労働省から認可を受けた。2005年4月には,m-トラネキサム酸を配合した薬用美白美容液「HAKUメラノフォーカス」を発売,ヒットを記録した。 第一世代「アルブチン」,第二世代「m-トラネキサム酸」と美白成分を進化させてきた資生堂が,第三世代の美白成分として開発したのが「4MSK(4-メトキシサリチル酸カリウム塩)」である。4MSKの最大の特徴は,メラニンの生成を阻害するだけでなく,角化エラーを正常化し,そのプロセスを整えることで排出も促進する点だ。2007年4月には,「HAKUメラノフォーカス」に4MSKを配合し,「HAKUメラノフォーカス2」としてリニューアル,発売から1年半で200万本を売り上げる大ヒットを記録し,名実ともに美白コスメの代表製品として消費者の支持を獲得した。エビデンスに裏付けられた「メラニンの生成阻害」と「メラニンの排出促進」というダブルの効果が,HAKU2のヒットの原動力となったといえる。 皮膚を構成する全ての層に作用するロレアル「プロキシレン」 一方,フランスに本社を置き,日本,米国,中国などに世界18ヶ所にR&Dの拠点を持つロレアルグループは,新しいアンチエイジング分子として「プロキシレン」を開発,2007年2月に概要を発表した。同社が着目したのが細胞外マトリックス。細胞外マトリックスとは,コラーゲンやエラスチンなどの線維状のたんぱく質と大量の水分を抱えた多糖類(グリコサミノグリカン,プロテオグリカンなど)が網状に絡まった構造を指す。加齢に伴い,これら構成成分の質と量が変わり,皮膚の老化を招くとされる。具体的には,線維芽細胞が作り出すコラーゲンやエラスチンが減少し,グリコサミノグリカンやプロテオグリカンの量が低下する。この結果,真皮は弾性を失い膨張する一方,水分子の結合部位が少なくなり,自由水が増加する。 そこでロレアルは,グリコサミノグリカンの合成活性化を目指し,新しいアンチエイジング分子の開発に着手,天然由来の化合物を中心に探索し,プロキシレンを開発した。「プロキシレンは,皮膚を構成する全ての層(表皮,基底層,真皮)に作用し,若々しさを保つために重要な役割を果たす複数の生体高分子の合成を助け,細胞外マトリックスの再構築に寄与する。複数の分子に働きかけるため,シワ,たるみなど肌トラブル全般に対して総合的な改善効果を発揮すると考えられる」(日本ロレアル研究開発センター学術部マネージャーの實川節子氏)という。 プロキシレンは,2006年のVICHYブランドの製品(日本未発売)を皮切りに,ランコム ブランドの「アプソリュ」シリーズなどに配合され,現在では,同社の全スキンケアブランド180品目に採用,同社を代表するアンチエイジング成分として展開が進んでいる。 今回、これら調査分析について、日経ヘルスラボレポート「アンチエイジング・機能性化粧品の市場・技術動向2009」(発行:テクノアソシエーツ)の中でまとめた。本レポートでは、アンチエイジング研究をリードする有識者や研究者、企業への取材や消費者へのアンケート調査を基にアンチエイジングの市場動向や研究開発動向をレポートしている。加えて、知財調査・コンサルティング会社であるSBIインテクストラの調査協力により、市場のメインプレーヤーである化粧品メーカー、原料メーカーなどの特許出願状況を分析。各社の技術競争力と地域戦略の側面から、アンチエイジング市場の行方を見通す。
(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)
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