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内外美容の新素材として注目高まるエラスチン
[2011/01/27]

  コラーゲンに続く大型の美容・健康素材としてエラスチンへの注目が高まっている。 エラスチンは、コラーゲンとともに皮膚の真皮、腱、血管壁等を構成している弾性のある繊維状たんぱく質で、コラーゲンとほぼ同じ部位に存在しているが、一般消費者のエラスチンに対する認知・理解度は、コラーゲンのようには高くない。コラーゲンと同様に加齢とともに減少、劣化することから、サプリメント等によって補う必要性が指摘されている。 これまでも化粧品素材としては、保湿成分として採用されてきたが、肌のキメや弾力の改善に効果があるというエビデンスや血管のアンチエイジングに効果が期待できるという研究成果も報告され、内外美容の新素材としての可能性に期待が集まっている。
写真:インアンドオン ネックスフォーミュラ
ゼリータブレット<美容ゼリータブレット>
14粒×6パック

 資生堂は、昨年9月下旬に40代女性がターゲットの内外美容ブランド「インアンドオン」の新ライン「ネックスフォーミュラ」のゼリータブレットに、初めてかつお由来のマリンエラスチンを配合した(写真)。「インアンドオン」では、美容食品と化粧品を同一ブランドで展開する新しい提案をおこなっているが、エラスチンをコラーゲンに続く内外美容の大型の素材に育てたいとしている。

加齢とともに劣化するエラスチン
 エラスチンは,皮膚や血管,靭帯などに含まれる線維状たんぱく質で、これら組織の伸び縮みに重要な役割を果たしている。皮膚のエラスチンは真皮層に存在し、伸縮性や弾性によって皮膚に弾力を与え、ハリを保つ働きをしている。コラーゲンと同様、線維芽細胞によって産生される。
 一方、紫外線や加齢、食生活などの影響により、加齢とともにエラスチンは劣化し、本来の機能が失活、肌のシワやたるみを招くとされる。さらに、コラーゲンと比べ、エラスチンは、加齢による変性が早く、20代後半から劣化が一気に進むと言われる。ターンオーバーも遅く、変性したエラスチンが皮膚に蓄積しやすい。そのため、化粧品や美容食品を通じた変性の抑制や新たなエラスチンの補給は、肌を若々しく保つために有用であると考えられている。

飲むエラスチンが「首のシワ・たるみ」に働く
 資生堂の「インアンドオン」は、普段のスキンケアに「飲む」と「つける」をプラスする6週間のプログラム。美容食品と化粧品を同一ブランドで提案することで、内外美容の相乗効果を効果的に高める特徴がある。「ネックスフォーミュラ」は、ゼリータブレットと美容液がセットになったラインで、その名の通り、首もとのシワやハリに着目して開発された。
 40代女性の肌悩みの筆頭が『ハリのなさ』であり、特に「首のシワ・たるみ」に対するニーズは高いという。
 首の皮膚は、頬に比べ、真皮が薄い。また頬の皮膚は表情筋につながって支えられているのに対し、首には支えとなる筋肉がない。そのため、顔に比べて自由に動かすことができる一方、日常の運動の影響を真皮のコラーゲンやエラスチンが受けやすいといわれており、エラスチンがアンチエイジングのための美容素材として着目された理由もそこにある。

皮膚の弾力、シワ、血流を改善
 カツオ由来のエラスチンを製造・販売する林兼産業では、エラスチンの肌への効果を検証している。皮膚真皮由来の線維芽細胞にカツオエラスチンを添加した試験では、細胞賦活作用、コラーゲン産生促進作用、エラスチン産生促進作用を確認している。
 また30代女性20名を2群に分け、片方にカツオエラスチン75mgを含むサプリメントを、もう一方のプラセボ群にカツオエラスチンを含まないサプリメントを、1日1回就寝前に、4週間摂取してもらった試験では、皮膚の弾力およびシワ、血流の改善作用等を確認した(図1図2)。
 林兼産業機能食品部の河村大輔氏は、「被験者へのアンケート(図3)では、かさつきや小ジワのような季節変動の影響が大きいと思われる項目だけでなく、肌の弾力やハリ・頬のたるみ等でエラスチン摂取群の改善効果が高かった。コラーゲンやヒアルロン酸と同様にエラスチンを摂取することは、肌状態の改善により有効であると考える」と話す。


 
図1: 4週間で皮膚の弾力性改善
 
図2: 皮膚の血流量改善


図3: 被験者アンケートではエラスチン摂取群は全ての項目で改善


血管のアンチエイジングにも
 エラスチンの肌以外への応用研究も進んでいる。その一つが血管のアンチエイジングだ。エラスチンは動脈の乾燥重量の約50%を占め、血管の柔軟性や弾力性を支える重要な働きをしている。「脳血管性疾患や動脈硬化の発症要因の1つとして、エラスチンの減少や変異が注目されている。出血や血栓の予防との関連も指摘されている」(林兼産業の河村氏)といい、血管への応用が期待されている。
 林兼産業が、経口摂取による血管への作用を確認した試験では、血管年齢の改善効果が示唆されている。20〜60代の46名の健常者(男性31名、女性15名。平均年齢43.1歳)を対象に、エラスチンを1日360mg摂取させ、1ヶ月ごとに8ヶ月間、血管の弾力の指標となる加速度脈波を測定し、血管の老化度(血管老化偏差値)を検証した。その結果、摂取3ヶ月目より有意な改善が認めら、その後も改善傾向が継続した。

 三重大学発のベンチャー企業、細胞外基質研究所では、動脈硬化などの血管性疾患や血管再生などへの応用を視野に研究開発を進めている。同社は、これまで水溶性にしか加工できなかったエラスチンの成形技術を確立し、ゲル化したエラスチン、微粒化したエラスチンなど様々な改良に成功、エラスチンの応用範囲を広げている。すでに人工血管や人工神経、止血シートなどを開発し、再生医療分野での臨床応用を目指した研究を進めている。
 また、エラスチン成形の基礎技術となっている架橋技術をもとに異なる物性を持った数種類のエラスチン素材(溶液)を生成させることにも成功、水溶性エラスチン試薬として提供を始めている。また、同じ技術により、人工皮膚のように肌に密着して伸縮性を持つエラスチンのファイバーシートを作成できるようになり、同社代表取締役社長で三重大学工学部、宮本啓一准教授は「化粧品メーカー等と連携し、この新しいエラスチン素材の機能性を確認しながらコスメ分野への応用も進めていきたい」としている。

(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)
・資生堂 IN&ON: http://www.shiseido.co.jp/inon/index.html
・林兼産業: http://www.hayashikane.co.jp/shohin/elastin_top.html
・細胞外基質研究所: http://www.ecm-labo.co.jp/


カツオ動脈球由来エラスチンペプチド
経口摂取による肌状態改善作用の検討




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