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アスタキサンチンに脳の認知行動能力を向上させる可能性
運転やスポーツでの判断力・敏捷性・注意力などのアップに期待

[2008/06/06]

 ヤマハ発動機ライフサイエンス研究所は,順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座の白澤卓二教授とアンチエイジングサイエンス社との共同研究で,「アスタキサンチン」に脳の認知行動能力を改善する可能性があることを確認した。

 今回の研究では,認知症などの脳機能障害には該当せず,加齢に伴う物忘れ傾向を自覚している50歳以上69歳以下の健常男性10人を対象にした。アスタキサンチン(ヤマハ発動機社製 ソフトカプセル)を1日12mg,12週間摂取してもらい,摂取の前,摂取6週後,摂取12週後それぞれで認知機能検査を実施した。その結果,摂取12週後には,反応の早さ,正確さ等の各種指標が改善。さらに記憶力の向上なども認められた。研究成果の詳細は,6月6日から7日まで東京国際フォーラムで行われる第8回日本抗加齢医学会総会で発表される。


炎症の元を抑える天然色素成分
  アスタキサンチンは,サケやイクラ,エビ,カニ,オキアミなどに多く含まれる天然の色素成分で,海洋性のカロテノイドの一種。一重項酸素の持つエネルギーを受け取り,安定した三重項酸素にする強力な抗酸化作用を持つ。
  その作用は,ビタミンCの90倍,ビタミンEの25倍ともいわれる。また,疲労回復や肌の老化を抑える作用,抗炎症作用など,幅広い機能があることも知られている。こうしたアスタキサンチンの持つ機能から,アルツハイマー病の発症予防に対する効果なども期待され,動物試験では記憶や学習に関する改善効果が報告されている。
  またヤマハ発動機は,生活習慣病や老化への関連が指摘されている炎症性サイトカインなどの生成を特異的に阻害し,「炎症」を元から抑えることも明らかにしている(関連記事)。



反応時間,正答率,集中度が向上
  今回の研究で行った認知機能検査は2種類。1つは,「CogHealth」という,パソコンモニターに映し出されるトランプに反応してボタンを押してもらう5つの作業からなる検査。「単純反応」,「選択反応」,「作動記憶」,「遅延再生」,「注意分散」の能力を測定する。前頭葉機能を中心とした脳機能を総合的に評価する検査で,脳機能の低下や改善などの変化をモニターしやすいという特徴がある。
  もう1つは,音に対する認知と反応にかかわる検査。ヘッドホンからランダムに出る1000Hz(プー音)と2000Hz(ピー音)の2種類のうち,ピー音が聞こえたらボタンを押してもらい,そのときに特徴的に現れる脳波波形(P300)の出現までの時間(潜時)とその大きさ(振幅)を測定する。この検査では,潜時が情報処理のスピードを,振幅により集中度を表す。

  結果,CogHealth検査では,摂取12週後の検査で摂取前に比べて「単純反応」,「選択反応」,「作動記憶」,「遅延再生」,「注意分散」の5つの作業すべての反応時間が改善した(図1)。また,記憶力を示す「作動記憶」の作業では,正答率も向上した(図2)。
  一方,音に対する検査では,集中度を示す「振幅」が増加し,中枢での認知処理レベルが向上していることが示された(図3)。これに対し,作業の反応指標である潜時には大きな変化は見られなかった。これらの結果は,知覚から運動発現までには変化が無く,中枢での認知処理レベルが向上していることを示していると考えられる。


図1
図1CogHealthの反応時間


図2
図2CogHealthの記憶タスクの正答率に関する多重比較結果


図3
図3Fz※におけるP300の振幅2


 加齢に伴いどうしても低下してしまう認知行動能力。ものが覚えにくくなったり,思い出せなかったり,周囲の状況の確認から行動までの判断に時間がかかってしまうようになったという実感は誰にでもあるはず。65歳以上の高齢者の交通事故は社会問題にもなっているが,高齢者による事故では,こういった認知機能の低下が大きな要因の一つ。こうした中,今回の研究で,アスタキサンチンの摂取により認知行動能力向上効果がある可能性が示唆されたことの意義は大きい。今後は治験者数を増やし,プラセボを用いた二重盲検比較対照試験により効果を確認していく予定。




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