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新たな価値を創造する農業 〜 動き始めた「新・農業」
[2008/03/07]
同カンファレンスで,「価値創造する農業〜健康・文化・自然価値と産業連携」と題して行われた栗原氏の講演より報告する。 農業の新しいイノベーションと方向性 まず,農業衰退の悪循環となっている現状から,農業活性の好循環のモデルを描き,日本の農業の目指すべき姿を語った。効率化の追及に主眼を置く従来の農業と線引きするために,「新・農業では,健康価値,自然価値,文化価値を前提にビジネスとしての魅力を再編集し,必要な体制やモデルを構築する必要がある」(栗原氏)との考え方を示した。 その具体像の1つとして,農業従事者だけではなく,流通事業者や販売事業者などとの連携を指摘,「社会適用性や消費者のニーズを把握するとともに,地方自治体や研究機関,関連産業と連携し,新しい産業を形成していくイメージになる」と,さまざまな関係機関との連携が生み出す新しい農業の姿を描く。 新・農業の展開と健康価値 こうした連携のもと,例えば,農業が持つ健康価値を再編集すれば,国民の健康増進に役立てることも可能になるだろう。もともと野菜や果物といった農作物には,さまざまな健康効果・効用があることが知られており,「農作物のもっている抗酸化力,解毒力,免疫力などを科学的に検証し,提案していくことができれば,農作物にとって大きな付加価値になる」。 健康増進対策の1つとして,サプリメントが注目されているが,自然に近い形,農作物本来の形で摂取したいという消費者のニーズは極めて高い。こうした消費者ニーズと農作物の健康価値をつなぐ施策は,農業のビジネスとしての可能性を大きく広げると考えられる。 「地域の伝統野菜や地場の食材に当てはめて考えると,地域振興にもつながる。各地方には,健康に良いと伝統的に伝えられている特産物が数多くあるが,この健康価値を科学的に裏づけ,情報を消費者につなぐことで,需要の拡大を図ることが可能になる。生産者にも消費者にも大きな役割を果たしていく」。栗原氏は,これらのサンプルとして4つの事例を紹介した。 新しい取り組みを始めた4つの事例 まず,紹介されたA社は,「野菜の持つ抗酸化力,免疫力,解毒力の3つの力に注目し,大学などと連携し,野菜の健康効果を研究・検証している。そのデータをもとに農業従事者には生産を働きかけ,需要者には,取引条件の適正化を求め,付加価値を高めることに取り組んでいる」。 次に紹介されたB協会は,「野菜が色や形,大きさが不揃いだというだけの理由で廃棄されたりしている現状に危機感を抱き,地域特有の農作物に対する知識を生活者にコミュニケートできる人材の育成に着目して,野菜ソムリエの資格を開発した。マスコミにも注目され,生活者層に大きな反響を与えている」。 3番目に紹介されたC社は,「ハーブの効用に着目し,そのミネラル成分のデータを15年以上にわたり蓄積してきた。その研究成果を海外で発表し,日本でも注目されつつある」。 4番目に紹介されたD社は,「いくつかの野菜や果物が牛乳とブレンドすることにより抗酸化機能を含む栄養の吸収がいいことに着目している。この技術とノウハウは,大手飲料メーカーや食品メーカーから注目され,OEM生産契約を結ぶまでになっている」と栗原氏は,新・農業の新しい可能性を示す事例を挙げた。 農作物を安全に提供する仕組みを整備 現在,消費期限を偽ったり,表示内容が虚偽だったりする食品疑惑が多くニュースになっている。そこで,農作物の安全に提供するシステムをとして注目されているのが,GAP(Good Agricultural Practice)だ。 栗原氏は,「GAPは,農業生産者自らが,食品の安全の確保,品質の改善,環境保全等のさまざまな目的を達成するために,農作物の点検項目を決定し,きちんと実行していこうというものである。このシステムは,ヨーロッパを始め,世界各国で取り入れられており,日本でも生産者と農協やスーパーなどが協力して,システム作りに取り組んでいる。この運動は,これまで述べてきた,農業が他の機関との連携をさらに深めていく上で,今後,大いに役に立つものと期待される」と世界的な農業の新しい流れを紹介して,講演を締めくくった。
記事要点掲載先:日経BP.net
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