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ピロリ菌を減らす「炭」が登場
来月中にも医師主導の治験へ
[2010/09/13]

 炭でピロリ菌を退治する――金沢医科大学総合医学研究所の出口喜三郎客員教授と友杉直久教授は、「ダイエタリーカーボン」と呼ばれる特殊な炭を活用して、慢性胃炎や胃がん発症のリスク要因であるピロリ菌の新たな除菌方法の開発を進めている(関連記事)。すでに数名のボランティアを対象にした予備的な臨床試験では、「(抗ピロリ菌効果の評価指標である)呼気試験および抗体価の数値が下がることを確認した。わずか3週間の摂取で呼気試験の数値が1/4に減少した対象者もいる」(友杉教授)という。来月中にも、大学の倫理委員会を経て、医師主導の治験に進める予定だ。
 日本人のピロリ菌感染者は5000万人から6000万人ともいわれており、除菌ニーズは極めて大きい。LG21乳酸菌を使用しピロリ菌を減らす効果があるヨーグルト「明治プロビオヨーグルトLG21」(明治乳業)は、シリーズで販売実績が300億円を超えるヒット商品に成長しており(2008年度)、乳酸菌に続く抗ピロリ菌素材として「ダイエタリーカーボン」に期待が集まっている。

幅広い吸着活性を示す「ダイエタリーカーボン」
 ダイエタリーカーボンは、友杉教授と同大発のベンチャー企業であるエムシープロット・バイオテクノロジー社(以下、MCプロット)が高純度の結晶セルロースを原料に開発したもの。現在、サプリメント「食べる純炭〜ル・カーボン」(写真1)としてシークワット社が販売する他、食品・飲料メーカー、化粧品メーカー等への原料供給も展開している。

写真1:食べる純炭〜ル・カーボン
 脱臭、空気浄化などに利用されている竹炭や石油ピッチを原料とする球状活性炭を用いた腎不全治療薬「クレメジン」と比べ、吸着活性が高いのが特徴。アンモニアやインドール、インドキシル硫酸、食品添加物であるソルビン酸(保存料)や亜硝酸ナトリウム(発色剤)、加齢臭の原因物質であるノネナール、糖とたんぱく質が不可逆的に結合した終末糖化産物(AGEs)など、幅広い物質に対する吸着活性が確認されている。

アンモニアを吸着し、ピロリ菌の生育を抑制
 ピロリ菌除菌方法への応用も、この吸着活性を利用したものだ。ピロリ菌は、胃の中の尿素を分解しアンモニアを発生させることで胃酸を中和し、胃粘液中で生存している。そのためダイエタリーカーボンがアンモニアを吸着すると、ピロリ菌は胃酸にさらされ、生育が抑制されると考えられる(特許出願済み)。
 実際、塩酸を散布した培地上ではピロリ菌は増殖するが、ダイエタリーカーボンを分散させた塩酸を散布すると増殖が抑制された。その抑制効果は、クレメジンと比べ、高いことを確認した(図1)。また、ヒト胃がんのモデル細胞(HGC-27)にピロリ菌を感染させた後、ダイエタリーカーボンを分散させた塩酸を散布した結果、ダイエタリーカーボン付近ではピロリ菌が除菌されることを確認した。
 「ピロリ菌の除菌では、抗生物質2種とプロトンポンプ阻害剤の3剤併用療法が行われているが、耐性菌の出現や副作用の問題から除菌に失敗するケースが30%程度存在する。また、胃がんによる胃部分切除後や無症状保菌者への胃がん予防措置としての除菌療法は保険適用ではなく、除菌手段がなかった。まずは、こうした従来のアプローチでは除菌できないケースに、この除菌方法を適用していきたい」(友杉教授)と話す。

(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)


図1: ダイエタリーカーボンはピロリ菌の増殖抑制効果が高い

ダイエタリーカーボン、クレメジンで、寒天培地上におけるピロリ菌の増殖に対する阻止径サイズ(ピロリ菌の増殖を阻止した広さ)とアンモニア吸着能を比較した。ダイエタリーカーボンは、阻止径、アンモニア吸着能が高く、ピロリ菌の増殖を有意に抑制することが確認された。




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