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米粉に続くか米タンパク質
機能性研究で広がる「お米」の可能性

[2010/03/19]


 最近,日本人の食の原点である「米」に注目が集まっている。2008年の小麦粉の価格上昇で注目を集めた米粉もその1つだが,最近では,食糧自給率向上の観点からも米粉が持つ“もちもち”とした食感や食味を生かした利用用途やシーンが開発・提案されている。パンやケーキ,麺などのほか,から揚げ粉やカレールーなど“ご飯”の枠組みを超えた需要を掘り起こしている。


追い風が吹く米タンパク質の研究

 こうした米食の多様化・需要喚起が進む中,日本の米どころである新潟を拠点に,米のタンパク質に着目した研究が進んでいる。米タンパク質は,白米に含まれる栄養成分のうち,炭水化物の次に多い成分で,日本人の1日総タンパク質摂取量の12%を占めている。米や大豆,小麦など植物由来のタンパク質に限ってみると,約40%が米タンパク質となっている。これは,高タンパク質食品として知られる大豆の2倍以上に相当する。日本人の食生活や栄養を支えるタンパク質源として,米は重要な役割を果たしている。
 一方,摂取量の多さとは反対に,機能性に関する研究は進んでこなかったが,近年,その生理機能や役割の一端が解明されつつある。追い風となったのは,「研究用に使う高純度の米タンパク質の供給技術・体制が確立されたこと」と,米タンパク質の研究をリードする新潟大学大学院自然科学研究科生命・食料科学専攻の門脇基二教授は話す。同教授は,2005年〜2007年にかけて新潟県に本社を構える米菓メーカーである亀田製菓と共同で米タンパク質のアルカリ抽出法を開発し,安定供給体制を確立した。


新たな研究により見直される「お米」の健康価値

 これまで動物実験や予備的なヒト試験を通じて,上記方法により抽出した米タンパク質には,血中コレステロールや中性脂肪低下による脂質代謝改善効果,消化吸収改善効果が確認されている。2008年には,新潟大学,新潟県立大学,京都府立大学,亀田製菓,築野食品工業を研究メンバーとした「米・米糠タンパク質の新規機能性の解明と食品開発」が,科学技術振興機構(JST)の地域イノベーション創出総合支援事業「重点地域研究開発推進プログラム(育成研究)」に採択された。米タンパク質および米糠タンパク質の新規機能性を探索・解明し,その栄養学・医学的価値を定義するとともに,機能性食品等を開発することを目的とし,これを受け,米タンパク質の機能解析が加速することとなった。現在,DNAチップによる遺伝子発現解析のほか,新潟県立大学人間生活学部の渡邊令子教授らは,米タンパク質の糖尿病への効果を糖尿病モデルラットを用いて検証を進めており,これらの結果から米タンパク質の新たな生理機能の解明が期待されている。
 これまで主食として当然のごとく消費されてきたお米。良質なタンパク質源として日本人の健康を支えてきた米タンパク質の研究成果をきっかけに,改めてその健康価値に期待が高まりそうだ。

(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)










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