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様々な疾病予防効果に関わるアスタキサンチン
糖尿病性腎症やパーキンソン病,メタボ予防に効果の可能性

[2008/10/24]



 9月18日,京都府立医科大学の青蓮会館(京都市上京区)で,第4回アスタキサンチン研究会が開催された。同研究会は,2005年に発足,アスタキサンチン研究に携わる研究者や企業関係者が情報交換を行っている。
 アスタキサンチンは高い抗酸化作用を持つことが知られている。また,最近では,「酸化」と並んで生活習慣病や加齢性疾患との関連が指摘されている「炎症」に対しても抑制作用があることが確認され,こうした機能性からアスタキサンチンは幅広い生理活性を発揮すると考えられている(関連記事)。
 今回の研究会でも,京都府立医科大学医学部消化器内科学の内藤裕二教授による教育講演「アスタキサンチン研究と酸化ストレスプロテオミクス」や,一般講演7題が発表され,糖尿病性腎症やパーキンソン病,メタボリックシンドロームに対する予防効果の可能性が示された。


糖尿病性腎症とアスタキサンチン

 教育講演では,酸化ストレスがたんぱく質の翻訳後修飾(Oxidative Stress-induced Post-Translational Modification:OPTM)を起こし,これが様々な疾病の原因となることについて内藤教授が紹介した。

 たんぱく質は,自身が酸化されることでたんぱく質の変性や失活を起こす。一方,たんぱく質の側鎖の酸化修飾は,生体機能を調節するためのスイッチとしても働いていることが,近年明らかになっている。しかし,たんぱく質の側鎖,特にヒスチジンやリジン,システイン残基が酸化によって不可逆的なOPTMを起こすと,調節機能を果たせないばかりでなく,老化や生活習慣病に関連する異常なたんぱく質を生成する。さらに,酸化修飾された残基は抗原として認識され,自己免疫疾患や,炎症性疾患の原因となることもあることが近年の研究で明らかになりつつある。

 こうした一連の酸化修飾のプロセスを抑える成分として注目されているのが,アスタキサンチンだ。「私たちの研究で,アスタキサンチンは腎臓の糸球体メザンギウム細胞の中のミトコンドリアたんぱく質の酸化修飾を抑制することがわかった。この抑制機能により,アスタキサンチンを投与するとメザンギウム細胞の破壊が抑えられ,糖尿病の合併症である糖尿病性腎症の予防効果があることが示唆された」と内藤教授は話す。また,「これまでの研究で,アスタキサンチンが効く人と効かない人がいることがわかっている。今後はそれを解析するためのマーカーを研究していきたい」と内藤教授はこれからの課題についても紹介した。


パーキンソン病の予防に可能性

 このほか,一般講演でも,疾病や老化予防に関するアスタキサンチンの機能が発表された。

 ヤマハ発動機の辻晋司研究員らの発表では,アスタキサンチンが酸化ストレスに対するドーパミンニューロンの細胞死(アポトーシス)を抑制することが示された。
 パーキンソン病になると,ドーパミンニューロンが著しく破壊される。これは,脳内の神経細胞を酸化ストレスから保護するDJ-1というたんぱく質が,パーキンソン病になると酸化修飾され,その神経保護作用を失うことが原因の一つとされている。研究では,まず培養した神経芽細胞に呼吸阻害剤であるロテノンを添加して酸化ストレスを発生させ,細胞から抽出したDJ-1たんぱく質がどの程度酸化されているかをみた。その結果,「ロテノンの添加前にアスタキサンチンを加えておいた細胞では,DJ-1の酸化が抑えられた。
 また,アスタキサンチンは,ドーパミンニューロンのミトコンドリア内でのアポトーシスの経路も抑制することがわかった。こうしたメカニズムにより,アスタキサンチンはパーキンソン病の発症予防に貢献するかもしれない」と辻研究員は話した(関連記事)(関連記事)。


目じりのしわや色素沈着を改善

 また,自治医科大学の菅沼薫氏らのグループは,アスタキサンチンを含む飲料を20週間摂取させた研究で,目尻のシワや色素沈着などが改善したことを発表した。
 研究では,66人を3グループに分け,「アスタキサンチン6mg,ビタミンC1000mg,ビタミンE10mg」を含む飲料と,「ビタミンCとEのみ」を含む飲料,アスタキサンチンもビタミンも含まない飲料を20週間毎日飲ませた。摂取前後で,皮膚の角質水分量や皮膚弾力,顔面画像解析などを行った。
 その結果,角質水分量や肌弾力などにはどのグループも変化がなかったが,アスタキサンチンを飲んだグループでは目じりのシワや色素沈着が改善した。また,アスタキサンチン入り飲料と,ビタミン入り飲料を飲んだグループでは,毛穴が小さくなった。菅沼氏は,「アスタキサンチンを含む飲料の長期摂取は,皮膚の老化を抑える機能があることが示唆された」と話した。


アディポネクチンの分泌の低下を抑える

 このほか,大阪大学の石神眞人氏らのグループは,アスタキサンチンが脂肪細胞の酸化ストレスによるアディポネクチンの分泌の低下を抑えることを発表した。
 アディポネクチンは,脂肪組織から分泌されるホルモンで,抗動脈硬化作用や,インスリン抵抗性の改善作用,脂肪燃焼作用などを持つ。メタボリックシンドロームになると,脂肪細胞での酸化ストレスが増大し,アディポネクチンの分泌低下が起こることがわかっている。
 石神氏らは,マウスの脂肪細胞に酸化ストレスを与え,アスタキサンチンの存在下と非存在下でのアディポネクチンの分泌量を見た。結果,アスタキサンチン存在下では,酸化ストレスによるアディポネクチンの分泌低下が抑えられ,その分泌量はコントロールレベルまで回復することがわかった。石神氏は,「アスタキサンチンはアディポネクチンの分泌障害を改善することが示唆され,メタボリックシンドローム発症予防にへの可能性も示された」と話した。

 次回,アスタキサンチン研究会は,東京海洋大学大学院の矢澤一良教授が大会長となり,09年に東京で開催される予定。



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