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2015.02.04

「健康寿命を延ばすには、“フレイル”期に適切なケアを」
東京大学 大学院医学系研究科・秋下雅弘教授

 去る12月11日、東京大学・小柴ホールで「第2回健康長寿ループの会」が開催された。同会は、東大COI拠点「若者と共存共栄する持続可能な健康長寿社会を目指す」が企画するシンポジウムで、健康・医療研究に関わる多くの産官学のステークホルダーが業界、大学の枠を越えて集まり、健康長寿社会の実現への課題解決に向けた情報交流の場となっている。後半のパネルディスカッションを前に、パネリストの東大、ハビタスケア、明治安田生命、味の素の識者が、各方面で取り組むヘルスケアビジネス、研究の紹介を踏まえて、健康寿命の延伸、ヘルスケアビジネス拡大に向けた課題を提起した。

会場写真

 パネルディスカッションに先立ち行われたプレゼンテーションでは、まず東京大学医学系研究科の秋下雅弘教授が、日本老年医学会が提唱する概念「フレイル」をが紹介した。「フレイル」とは、健康と要介護の間に位置する高齢者の状態を指すもので、従来は「虚弱」「衰弱」などと表現されてきた。75歳以上の高齢者はこのフレイルという中間時期を経て徐々に要介護状態へと移行する。つまり、このフレイルの時期に適切なケアを行うことが、健康寿命を伸ばすことにつながる。だが、医療の現場においてもこのフレイルについての認識は「まだまだ浸透していない」と秋下教授は指摘する。
  フレイルから要介護に至るには、ADL(日常生活動作)の低下、認知症、うつなどの身体的・精神的要素のほかに、独居や経済的側面などソーシャル要因も関係する。つまり高齢者医療はこうした包括的アプローチが必要であり、秋下教授は一般的な成年への医療が病気の治療であるのに対し、高齢者医療は治癒(キュア)だけでなく総合的なケアの視点が重要だと強調した。

味の素が開発したがんリスクのスクリーン技術AICS、生活習慣病への応用も

 続いて、味の素フロンティア研究所の森妹子氏は、同社開発のアミノインデックス®を用いたがんリスクのスクリーニング技術(AICS)を紹介した。病気などによって血中アミノ酸バランスが変化することを利用し、多変量解析によってがん罹患リスクを3段階で示すもので、わずか5mlの採血で肺、胃、乳、前立腺など複数のがんリスクを検査することができるという。
 同社では、対策型がん検診にAICSを併用した場合、その費用便益分析を一橋大学と共同研究している。それによると50〜70歳の男性で、特に胃、肺、大腸の受診において便益像(早期発見による治療費減少、死亡による収入源の抑制)が費用像(がん検診、AICS受診費用、精密検査受診費用)を上回ったという。がんリスクスクリーニングは、すでにサービスが開始されており、主に既存の対策型がん検診のオプションなどとして提供されている。一方、今後の展開として森氏は「生活習慣病のスクリーニング検査などに利用できるよう研究開発を進めている」と話す。

東京大学大学院医学系研究科 秋下雅弘 教授
東京大学大学院医学系研究科
秋下雅弘 教授
味の素フロンティア研究所 森妹子 氏
味の素フロンティア研究所
森妹子 氏

「ヘルスケアビジネス拡大には3つのステップが重要」(ハビタスケア・徳渕社長)

 糖尿病など生活習慣病予防サービスを提供するヘルスケア関連ベンチャー、ハビタスケア代表取締役社長の徳渕真一郎氏は、ヘルスケア領域での新しい収益モデルの起ち上げに関するプレゼンテーションを行った。徳渕氏は、ヘルスケアビジネスを拡げるには、①「エビデンス精査・検討」、②「サービス化」、③「伝える仕掛け」の3ステップが重要だと指摘。同社では、2型糖尿病への罹患リスクを体質(DNA分析)と生活習慣(環境分析)から評価し、その結果に基づいたパーソナルな予防アクション指導を提供するサービスを提供しているが、これを例にすると、大学病院との共同研究による予測モデルの開発でエビデンスを担保。さらに、サービス展開については医療機関、企業ターゲットにしたB to B to Cという構図となっている。これについて徳渕氏は、「時間はかかるが、より確実にサービスを拡げることができる」とそのメリットを話す。また、伝える仕掛けとしても医療機関、企業を介することで医療資格保持者によるカウンセリングとなり、より的確な予防指導とすることができるという。

「時代に合わせて生命保険も変化」(明治安田生命・山本氏)

 「時代の変化に合わせ、生命保険も従来とは大きく変わってきている」と話すのは、明治安田生命営業教育部の山本英生氏。入院保障なども、かつては入院20日目以降を対象とするものが多かったが、入院期間の短縮(平均17.5日)を受け、最近では1日の入院から給付金を支給したり、日額計算ではなく入院中の診療報酬点数に連動した保障を行う商品も出てきている。ただ、公的保障が先行き不透明なことの認識度は高まっているものの、介護保険、個人年金といった分野での私的保障への加入率はまだまだ低いのが現状と指摘。特に、介護保険では男女ともに私的保障への加入率は1割未満だという。

ハビタスケア 代表取締役社長 徳渕真一郎 氏
ハビタスケア 代表取締役社長
徳渕真一郎 氏
明治安田生命 営業教育部 山本英生氏
明治安田生命 営業教育部
山本英生氏

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