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白澤卓二教授が展望 新時代のアンチエイジング医学とは

第2回
抗加齢から加齢制御へ
〜キーワードは「食事」「運動」「生きがい」〜

[2009/02/03]



 いまアンチエイジングはどこへ向かおうとしているのか。抗加齢医学の専門家である順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座の白澤卓二教授に聞くシリーズ。白澤教授は,いま日本人のアンチエイジングに対するニーズにマッチした医療のモデルを構築しようとしている。そこで重要な役割を果たしているのが「食事」「運動」「生きがい」だ。


患者のモチベーションを高める

 拡大しているアンチエイジングビジネスだが,すべての領域がうまく展開できているわけではないことは前回紹介した。なかでも,内科医が展開してきた予防医療としてのアンチエイジングドックは,人々の期待は大きいものの,自由診療が受診のハードルを高くしていることが分かった。では,アンチエイジング医療を普及させていくためには,どうしたらいいのか。白澤教授は,内科領域では生活習慣病の改善など,従来の保険診療のなかに,アンチエイジング医学の成果を,うまく取り入れていくことが重要だという。


順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座 白澤卓二教授
順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座
白澤卓二教授
白澤 アンチエイジングドックの展開がうまくいかない最大の理由は,なぜアンチエイジングに取り組まなければいけないのかという,患者さんのモチベーションを高めることに失敗してきたからだと思います。逆に,モチベーションを高めることができれば,患者さんの再診率は大きくアップし,医療モデルとして成り立つといえます。
 例えば,私は「血管のアンチエイジング」により患者さんの再診率を高めています。最近,血管の加齢変化を数値化したり,イメージングする技術が急速に進歩しています。脳のMRI(磁気共鳴画像法)では,脳血管の動脈硬化度を患者さん自身の目ではっきりと見ることができる。こうした具体的データと共に,「アンチエイジングをしないと5〜10年で認知機能が低下しますよ」とアンチエイジングの必要性を説くことで,患者さんは生活習慣改善に積極的な姿勢を示すようになります。
 また,頸動脈エコーやPVW(脈波伝播速度)で,血管年齢を算出することもできます。自分の血管年齢が実年齢よりも老けていれば誰でも気になり,「何をしたらいいですか」と患者さん自身が切り出すようになります。モチベーションが高まるわけです。


 しかし,どんなに患者のモチベーションを高めても,自由診療のハードルはやはり高い。白澤教授は,こうした取り組みを保険医療として行うことを目指している。しかも,それは医療費高騰に結びつくのではなく,健康でいられる年齢を高めることにより,医療費削減の効果があるという。


白澤 血管の場合は新しい診断技術で「群発性微小脳梗塞」などの診断名がつくので,保険医療の範囲でアンチエイジング医療を行うことが可能です。特に50歳代の男性の場合,血管でアプローチすることで,アンチエイジングの指導をすることが容易になる。女性では,骨密度を測定することなどが,患者のアンチエイジング指導のきっかけになるでしょう。
 自由診療のアンチエイジングがなかなか軌道に乗らない現在,保険診療の枠組みで,患者の健康とQOLを守っていくためにアンチエイジング医療を広げていくというのが私の現在のアプローチとなっています。核となる保険医療には,このほか糖尿病や高血圧症予防群となるメタボリック症候群の改善,筋肉年齢,認知機能などがあります。また,美容皮膚科,美容形成の領域でも,患者に内科的なアプローチをしていく方法があるでしょう。


日本流に変わるアンチエイジングの定義

 アンチエイジング医学の新しいアプローチを模索し続ける白澤教授。そのなかで,いまアンチエイングの定義そのものも,変えていく必要があるという。


白澤 ご存知の通り,アンチエイジング医療は,米国で生まれたアプローチです。体内のホルモンレベルを35歳前後まで戻すことが目的とされ,ホルモン補充療法を中心に発展してきました。ホルモンを若いときのレベルまで引き戻すことから,「アンチ(抗)エイジング(加齢)」という表現となりました。
 ところが,現在,日本でこうした目的でホルモン補充療法を行っている医療機関はほとんどありません。更年期障害の症状軽減のために実施されている程度で,ホルモン量を若い頃のレベルまで戻すという米国流の考え方とは明らかに違うのです。
 しかし,最近では日本的な女性ホルモンの補充治療でも,経年による骨密度の減少を遅らせることが分かってきました。いわば抗加齢というより,加齢制御的な意味でのアンチエイジングのアプローチといえます。
 エイジングのスピードをスローダウンすることで,高齢期のQOL(生活の質)を保っていくというのが,日本的な広い意味でアンチエイジングの定義。こういう考え方をすれば,食事,栄養成分,さらには運動によって体の機能を維持することもこの領域に入ります。


「食事」「運動」「いきがい」によるトータルなアンチエイジングを

 白澤教授が,順天堂大学大学院に医学研究科加齢制御医学講座を設けたのも,こうした新しいアンチエイングの考え方の効果を臨床の場で実証し,世の中に広めるためだ。そして,そのアプローチで重要な役割を果たしているのが「食事」「運動」「生きがい」だという。


白澤 例えば,脳血管の画像診断で脳の動脈硬化病変が見つかった場合。治療にもっとも近いのは医薬品です。その反対の極にあるのが食事になります。特に,本人に自覚症状がなく,検査で分かる段階では,食事や生活習慣の改善,サプリメントが有効であることが分かってきました。また,こうしたライフスタイルを固定化させるモチベーションとして,本人が「生きがい」を実感することが大切になります。そのためのツールとしては,ヘルスツーリズムや森林浴などが有効になるでしょう。
 実際の臨床で診療していると,サプリメントに期待する患者さんは多いです。しかし,現在の薬事法では混合診療は認められていないので,“サプリメント処方箋”を出すことは難しい。病院の売店や薬局などで買ってもらうしかない。そうなると,患者も「だったら保険診療の薬を出してください」ということになってしまう。“運動処方箋”についても同様です。
 現在の日本の医療は,正常と病気の線引きにこだわりすぎている。特に,エイジングの場合,エイジングにより変化する体の機能や症状をいかにコントロールするかが重要であり,「病気か健康か」という二者択一で捉えることはあまり意味がない。こうした考えに基づいた医療システムを構築し,医薬品だけでなく,食事,サプリメント,運動などを組み合わせたトータルなアンチエイジングを実現することが,予防医学に重なり,国民の健康維持,医療費抑制にもつながると考えています()。


次回は,白澤教授が行っているアンチエイジング医療の実際と,注目される新しい研究成果について紹介します。


 :新しいアンチエイジング医学を実践
新しいアンチエイジング医学を実践






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